- 例の流行り病の影響も、ようやく下火になったようですが、ここにきてロシア軍のウクライナ侵攻による芸術分野への影響が新たに出てきたようです。
- ロシアの名門、ボリショイ・バレエ団のプリンシパル、ジャコポ・ティッシ氏が退団を表明したり、ロシア人アーティストの出演をボイコットするという例もあるようです。
- これとは別に、単に国籍を理由に差別することを問題にする意見も出されるなど、本来の芸術活動にそぐわないのではないのかと思われる事例が見受けられます。
- 歴史を見れば、戦争を含む、政治的な問題と芸術が無関係だとは言えないと思われます。
- 一例として、ロシアの高名な作曲家チャイコフスキーの「1812年」という曲があります。
- チャイコフスキーは、1840年生まれですから1812年のナポレオンによるロシア侵攻のことなど経験しておらず、この曲の依頼を受けた時もあまり乗り気では無かったようです。
- 作曲し終えた後も、チャイコフスキー自身は「決して精魂を込めて書き上げた作品とは受け止めてはいなかった」と言われています。
- 現に、この曲は、イギリス軍がフランス軍に勝利したことを音楽で表現したベートーヴェンの作品番号91番「ウェリントンの勝利」と曲の構成がそっくり同じです。
- 「ウェリントンの勝利」でつかわれているイギリス国歌をロシア国歌に、イギリス民謡をロシア民謡に置き換えただけとは言いすぎでしょうが、ほとんどこれに近いですね。オーケストラに大砲が出てくるところも・・・
- ところが、チャイコフスキーの独創性がほとんど感じられないこの曲は、初演から大人気だったようです。
- 今では高く評価されていますチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番は、ニコライ・ルビンシテインによって「演奏不可能」とレッテルを貼られ、ヴァイオリン協奏曲は、名ヴァイオリニストのレオポルト・アウアーに初演を拒絶されました。
- また、バレエ「白鳥の湖」も初演での評判はさんざんで、これには、チャイコフスキーもかなり悩んだと言われています。
- にも拘らず「1812年」は、ロシアがフランスに勝ったという題材だけで、初演から大人気だったことは戦争と芸術は無関係とは言えないように思います。
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