音楽メモランダム (2007年掲載分)
目 次
MUSICO がんばれ! (November 18, 2007)
楽曲配信の普及を阻むもの (August 26, 2007)
空演奏の勧め (July 9, 2007)
神尾真由子さんチャイコフスキー・コンクール優勝 (June 30, 2007)
本格普及を迎えるDRMフリー楽曲配信 (May 25, 2007)
DRMとの決別? (April 3, 2007)
コンサート・ホールで遊ぶ (April 1, 2007)
権利亡者、今度は放送業界 (February 4, 2007)
過去の掲載分 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 2000年 1999年
楽曲配信の普及を阻むもの (August 26, 2007)
空演奏の勧め (July 9, 2007)
神尾真由子さんチャイコフスキー・コンクール優勝 (June 30, 2007)
本格普及を迎えるDRMフリー楽曲配信 (May 25, 2007)
DRMとの決別? (April 3, 2007)
コンサート・ホールで遊ぶ (April 1, 2007)
権利亡者、今度は放送業界 (February 4, 2007)
過去の掲載分 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 2000年 1999年
MUSICO がんばれ! (November 18, 2007)
- 直前のこの欄にDRMフリー楽曲配信について「米国と違って日本は静かなもの・・・」と書きましたが、その2ヶ月後にエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(NTT Com)がDRMフリー楽曲配信を開始しました。
- それから1ヶ月近くが経過しますが、皆さんそのサイト(MUSICO)からダウンロードしていますか?
- NTT Com が旧態依然のレコード会社を尻目にこのサービスに踏み切ったことには敬意を表したいと思います。このうえは、みんなでこのサービスを盛り上げて、サービスの発展に寄与しようではありませんか。
- どんどんダウンロードして世間の話題に上るようになれば、他の会社も堰を切ったようにこのサービスに参入すると思います。
- 我々利用者は、DRMフリーであることを悪用しないだけではなく、そのようなことをする輩に手を貸すようなことをしないことが、このサービスを一般化させる前提の一つになると思います。
- まずは、NTT Com の英断に拍手を送りたいと思います。
楽曲配信の普及を阻むもの (August 26, 2007)
- 音楽のように形の無いものは、CDのような媒体だけではなく、電波や情報ネットワークなどで配信されることが輸送費・店舗スペース・倉庫代などの観点から見れば経済的だと思われます。
- 特に、ネットワークによる楽曲配信は、検索機能・電子決済などの便利な機能も利用できます。
- WMCでは、以前から楽曲配信の普及を提唱してきましたが、日本ではまだまだ関係事業者が及び腰のようです。関係事業者などという不明確な言葉を使いましたが、これは、以前レコード会社(いわゆるレーベル?)と呼ばれていた会社を指しています。レコードのプレスなどはしていない今はなんと呼べばよいのでしょうか?、
- この欄でも何回も指摘してきましたが、彼等は、アーティストや聴衆の権利ではなく、自分たちの権利のみを頑なに守ろうとしています。特に、著作権法でも認められている個人が自分のために行う複写・改変などの権利を侵害することに何の罪悪感も持っていません。
- 米国では、ウォルマート・ストアーズがDRMフリー楽曲配信を始めたことを8月21日に明らかにしました。米国の楽曲配信市場では、この他にも活発な動きがあり、同じ8月21日に MTV Networks 、RealNetworks および Verizon Wireless の3社が映像・音楽のネットワーク配信事業を統合して、9月上旬から新サービス Rhapsody America を始めると発表しました。
- 今年の3月から5月にかけて、DRMとの決別?、本格普及を迎えるDRMフリー楽曲配信など米国の動向を踏まえた楽曲配信期待論を書きましたが、米国と違って日本は静かなものですね。
空演奏の勧め (July 9, 2007)
- 音楽之友社の 〔ONTOMO MOOK〕の最新刊(2007年6月発行)は、theミュージックセラピー Vol.11 です。ミュージックセラピーは、ポドルスキーの音楽療法に端を発するようですが、今は、いわゆるヒーリング・ミュージックを含め、かなり広い意味に使われているようです。
- WMCの情報交換手段として以前使っておりましたメーリングリストで、当時メンバーであった歌手の牧野俊治さんが音楽セラピーのすすめという書籍をだされたときに少し話題になりましたので、古いメンバーの方は覚えておられるかもしれません。
- このときに、音楽は単に聴くだけではなく、演奏することによっても癒されること、また、CDなどで一方的に音楽を流すだけでも意味が無いわけではないが、生の音楽を聴くことにもっと意味があるというような議論もありました。
- 演奏者にとっても聴衆の反応を感じながら演奏することは、機械に向かって演奏することとは全く異なるという話は、ギターリストのジョン・ウィリアムさんが来日されたときにテレビのインタビューに応えて話されていました。
- 古くは、日本人にとって歌とは生活の一部で、日本人が漢字を使うようになったときにも政治的な文書は漢文で書かれていたようですが、大事な歌を記述するために本来の漢字の使い方とは異なる「万葉仮名」を発明しました。このように新しい技術を歌のために使うことは、近くは「カラオケ」を発明して、これを世界中にを広めたことでも示されているように思います。
- 音楽は聴くことでも楽しめますが、演奏することでも楽しめます。上手下手は二の次で、要は楽しめるかどうか、癒されるかどうかではないでしょうか。
- 以前、WMCのメーリングリストで書きましたが、アムステルダム・コンセルトヘボウの聴衆は、その大部分が演奏者(必ずしもプロというわけではありません)で、舞台での演奏を聴きながら自分でも演奏しています。楽器もヴァイオリンありチェロあり(もちろんエアー・ヴァイオリンやエアー・チェロ)ですが、一番多いのは指揮者だったように記憶しています。
- それに比べれば、日本の聴衆はおとなしいものですが、客席にいても舞台の演奏者と一緒に演奏したいという気持ちは変わらないのではないでしょうか。ただ恥ずかしいので、おとなしくしているだけのように思います。これからは、恥ずかしがらずに、エアー・ヴァイオリンやエアー・チェロを弾きましょう。指揮者を演じるのも悪くないですね。
神尾真由子さんチャイコフスキー・コンクール優勝 (June 30, 2007)
- 神尾真由子さんが第13回チャイコフスキー国際コンクールのヴァイオリン部門で優勝されました。
- 前回の第12回(2002年)コンクールでは、ピアノ部門で上原彩子さんが優勝し、ヴァイオリン部門で川久保賜紀さんが1位なしの2位に入るなど日本人が頑張っていますね。
- ヴァイオリン部門での優勝といえば、第9回(1990年)コンクールでの諏訪内晶子さんが日本人初ですが、もう17年も前のことになりました。
- 今は廃止いたしましたWMCのメーリングリストで、上原彩子さんがチャイコフスキー・コンクール出場直前に、東京銀座で行われたリサイタルを話題にしたとき、その名前を知っている人はほとんどいませんでしたが、神尾真由子さんの名前はその頃でもよく知られていました。
- WMCのメーリングリストで思い出しましたが、神尾真由子さんの恩師、原田幸一郎さんのそのまた恩師のディレイ先生の教育方針が一言で言うと「楽しいから弾く、難しいかどうかは二の次」のようです。要するに楽しくない音楽なんて音楽じゃない?
本格普及を迎えるDRMフリー楽曲配信 (May 25, 2007)
- この4月に、英国EMI社がDRMフリー楽曲配信について発表しましたが、このとき最初に配信するストアは、米アップル社の iTunes Store であることも明らかにしました。
- その後、マイクロソフトも Zune Marketplace で配信することを明らかにしました。
- ここに来て、オンライン店舗最大手のアマゾンがDRMフリー楽曲配信を発表し、ついにDRMフリー楽曲配信は、本格的な普及期に入るようです。
- アマゾンの参入は、同じDRMフリー楽曲配信とはいってもアップルやマイクロソフトとは全く異なった意味を持っております。
- それは、配信する楽曲のファイル・フォーマットにあります。アップル は AACフォーマットです。マイクロソフトは特にフォーマットには言及しておりませんが、これまでのWMAフォーマットを捨てはしないでしょう。
- これに反し、アマゾンは、配信する楽曲のファイル・フォーマットがMP3であることを明らかにしています。なにしろMP3は、AACやWMAとは異なり、どのメーカの機器でもサポートできる標準フォーマットなので、一部のメーカに囲い込まれる心配はありません。
- こうなれば、さすがに既存の権利保護の仕組みのみを主張しつづける日本の業界も同調せざるを得なくなるのではないでしょうか。
- 振り返ってみれば、コンピュータのソフトウェアでも当初は、違法コピーに対処するためにコピープロテクトをかけることが普通に行われていました。しかし、著作権の保護とは、コピーさせないことではなくて、コピーを違法利用させないことですから、今は、コピーはしても良いが、著作権者の意図しない利用はしないということを約束させることに変わりました。
- 楽曲配信も、遅ればせながらこの方向に進んでいくように思えます。
DRMとの決別? (April 3, 2007)
- 昨日(2007年4月2日)英国EMI社が DRM(デジタル著作権管理)フリーの楽曲を5月から配信すると発表し、最初に配信するストアは、米アップル社の iTunes Store であることも明らかにしました。
- 以前WMCでは、アップルが iTunes Store でアップルの機器でしか聴けない音楽を配信していることを批判していましたが、これはアップルの真意ではなく、レコード会社の著作権保護要求によるもののようでした。Steve Jobs さんごめんなさい。
- EMIの発表では、これまでより2倍高音質のファイルを DRMフリーで配信するとのことです。これにより、ユーザは、iTunes Store で購入したファイルを iPod 以外の機器にも自由にコピーして音楽を楽しめることになります。
- 尤も今のところポータブル・プレーヤとしては、音質はともかく、デザインと操作性の良さで iPod に勝てる機器は無いように思えますが、パソコンや据置きの機器でも聴けるようになることが大きいと思います。EMIの発表でも消費者の84%が同じ音楽ソースを複数の機器で聴くことを望んでいるようです。
- ただし、このことを悪用して海賊行為に走るやからが出てくることも懸念されます。EMIも発表の中でそのことには触れていますが、我々消費者自身がそのような行為に荷担しないようにして、海賊行為が商売として成り立たないようにしなければなりませんね。
- 本題ではありませんが、今回のEMIの発表は、記者会見の模様まで全て公開されていて好感が持てます。EMI Group のCEO Eric Nicoli 氏とアップルCEO の Steve Jobs 氏のスピーチのほか記者たちとの質疑応答まで、聞き取り易い音質で聴けます。
コンサート・ホールで遊ぶ (April 1, 2007)
- 今回は、これまでと趣向を変えて、明日(4月2日)から改装工事のため休館となるサントリーホールで遊んできたお話を書きます。
- アークヒルズの「桜まつり」にあわせて、サントリーホールを一日無料開放する「オープンハウス」に行ってきました。当日の「オープンハウス」スケジュールの詳細は、サントリーホールのページを見ていただくとして、ここでは、そのうち「ホール・ガイドツアー」について記します。
- このツアーは、1日5回、1回30分の予定で、各回先着20名を対象に行うとされていたものです。私は、10時30分に始まる最初の回に間に合うように1時間近く前に会場につきましたが、既に、6〜7人が並んでおり、開始30分前には、50人近くの人が並びました。結局、1組30名弱のグループを2組にしてツアーが開始されました。
- ツアーでは、ホールそのもののほか、ロビーにあるシャンデリアや各種モニュメントなどについて作者や作品の意味の紹介もあり、案内の方の話もユーモアを交えて楽しいツアーでした。
- 私もサントリーホールには何度となく行きましたが、盲導犬のためのトイレが設置されていることなどは、このツアーで始めて知りました。楽屋や舞台裏について案内が無かったのはちょっと期待はずれでした。
- また、オルガン・コンサートとオーケストラ・コンサート(演奏者、曲目等)も聴きました。無料で入退場自由だからか、聴衆の態度があまり良くありませんでした。私は、ヨーロッパの教会で無料入退場自由のオルガン・コンサートを何度も聴きに行きましたが、こんなことは無く、日本では、自分の家でテレビを見ている場合と多くの人たちが集まる会場で聴く場合とを区別しない家族連れが多少見受けられるようです。道路などの公共の場所にごみやタバコの吸殻を平気で捨てる感覚と一脈通じるように思います。
- それはともかく、普段はあまり見られないパイプオルガンの演奏台を間近に見ることができました。
- サントリーホールに行ったついでに、3月30日にオープンしたばかりの東京ミッドタウンホールにも行って来ました。私の行った時間(午後1時頃)には開館していないので、残念ながら、中は見ることができませんでした。尤もこちらは、サントリーホールのようなクラシック音楽専用ホールではなく、展示会やファッションショーなどのイベント会場としての利用が主な目的のようです。
- しかしながら、同様の狙いである東京国際フォーラムのホールも毎年開催される「熱狂の日」音楽祭では、クラシック音楽の演奏に使われているので、このホールでもクラシック音楽のコンサートが行われるかもしれません。
- 写真は、外苑東通り側から東京ミッドタウンプラザを写したものです。正面が、オフィスビルのミッドタウンタワーでその右手の地下1階にホールがあります。 余談ですが、この写真を撮っている背中側の外苑東通りでは、直前まで、都知事候補としての石原慎太郎氏の立会演説会がありました。
権利亡者、今度は放送業界 (February 4, 2007)
- WMCでは、音楽のネット配信に関して、永らくレコード(CD)業界の著作権に関する姿勢を批判してきておりましたが、米アップル社がこれを見事に解決し、楽曲配信の分野で大きな成果を上げました。
- このような状態になってから、レコード業界もやっと重い腰を上げて楽曲配信に手をつけ始めましたが、時既に遅しという感が無いわけでもありません。
- 固体媒体のCDより、物理的な形のない楽曲配信の方が流通コストが下がるのは明らかで、例えば、ユニバーサルミュージックなどでは、CDを作らずネット配信のみの楽曲も発売しています。
- どちらにしても、音楽のネット配信は、時代の流れになりました。
- ところが、地上デジタル放送に関連して、デジタル放送の録画をコピーワンスにすることを主張して譲らない放送業界が次の問題業界になってきました。録画したものをコピーはできるが、コピーすると、元の録画は消えてしまうというばかげた仕様です。
- ネット配信に関しては、頑迷なレコード業界にアップル社という異業界の会社が参入してうまくいきましたが、放送に関しては、電波の割り当てという問題がある限り、他業界からの参入は困難です。
- 他業界から元気のよい会社に割って入ってもらいたいとも思いますが、ここは、総務省にがんばってもらって、放送業界が角をためて牛を殺すようなことをしないように舵取りをしてもらいたいものです。