音楽メモランダム (2003年掲載分)
目 次
日本でも Napster 2.0 サービス (November 30, 2003)
Napster 2.0 サービス開始 (November 2, 2003)
インターネットとコンサート情報 (July 13, 2003)
(財)日本交響楽振興財団の地方巡回公演 (July 6, 2003)
ファイル交換ソフトは合法 (May 1, 2003)
歓迎!アップルの "iTunes Music Store" (Apr. 30, 2003)
芸能活動にかかる源泉徴収制度の撤廃に思う (Feb. 8, 2003)
デジタル社会の新音楽ビジネスモデル (Feb. 8, 2003)
2002年掲載分は、こちらにあります。
2001年掲載分は、こちらにあります。
2000年掲載分は、こちらにあります。
1999年掲載分は、こちらにあります。
Napster 2.0 サービス開始 (November 2, 2003)
インターネットとコンサート情報 (July 13, 2003)
(財)日本交響楽振興財団の地方巡回公演 (July 6, 2003)
ファイル交換ソフトは合法 (May 1, 2003)
歓迎!アップルの "iTunes Music Store" (Apr. 30, 2003)
芸能活動にかかる源泉徴収制度の撤廃に思う (Feb. 8, 2003)
デジタル社会の新音楽ビジネスモデル (Feb. 8, 2003)
2002年掲載分は、こちらにあります。
2001年掲載分は、こちらにあります。
2000年掲載分は、こちらにあります。
1999年掲載分は、こちらにあります。
日本でも Napster 2.0 サービス (November 30, 2003)
- Roxio Napster部門の Michael J.Bebel COO が、Napster 2.0 の日本での展開については、既にレコード会社などとの話し合いを開始しており、「今後、12カ月以内にサービス開始したい」と表明したと2003年11月25日に報道されました。
- 日本でのサービス開始における課題についてBebel氏は、「知的財産の制度の違い」をあげたそうです。また、EUなどでも同じく12カ月以内のサービス開始を目指しているということです。
- これで、通信網を利用した音楽の流通がいよいよ本格化するのではないか思います。
- それにしても、現在音楽流通の主流のCD会社の対応が、面白いですね。ネット配信に積極的なS社と保守的なT社との違いが・・・
Napster 2.0 サービス開始 (November 2, 2003)
- 米国 Roxio の Napster が米国時間2003年9月29日に有料音楽配信サービス「Napster 2.0」を米国でサービス開始しました。Napster 2.0 は、50万曲を超える音楽ライブラリを所有しています。
- このサービスは、米国のアップルコンピュータが米国時間2003年4月28日に発表しました "iTunes Music Store" と同じく、1曲わずか99セントでダウンロード購入できますが、さらに月額利用料9ドル95セントで無制限に楽曲ダウンロードができるプレミアム・サービスも用意されています。
- また、楽曲を友人に電子メール送信する機能や、他のメンバーの音楽コレクションを閲覧する機能なども提供しています。
- これに対してCD業界がどう出るのか、古い体質の会社なら、このような動きに追従することは無いと思います。逆に、またまた著作権をたてにとって、このような動きを封じ込めようとするかも知れませんが、しばらくは、お手並み拝見と静観するのではないでしょうか。
- 何度も書いていますが、作曲家や演奏家の(CD業界のではない)権利を守りながら、消費者に流通コストがかからない新しい音楽流通のモデルが確立することを期待しています。
インターネットとコンサート情報 (July 13, 2003)
- インターネットが普及する前は、コンサート情報と言えば、ホールの入り口で手渡されるパンフレットか「音楽之友」や「ぴあ」などの雑誌から得られるものでした。
- 最近でもこれらは健在で、CDショップや楽器店などにも置いてある無料の情報誌「ぶらあぼ」などもよく利用されているようです。
- 一方、主催者の立場では、これらの媒体にかかる費用は大きいので、全てインターネットで広報すれば安上がりになります。
- 主催者だけではなく、ホール側も、直接の客である主催者のためにもその情報をホールのウェブサイトに掲載してあげれば、安い費用で宣伝してあげることが出来ます。
- ところが、ホールの中には、ホール自身が主催するコンサートの情報しかウェブには掲載しないと言う度量の狭いホールがあります。東京文化会館、サントリーホール、東京芸術劇場などのウェブサイトではホール自身が主催しない情報も詳しく掲載しています。このようなウェブサイトは最近増えてきました。近い将来、全てのホールがこれらを見習ってくれるとともに、主催者や演奏者も自身のウェブサイトでコンサート情報を詳しく掲載するようして、印刷物をなくすることができれば、広告に要する費用もずいぶん減ると思います。
- 先にも書きましたが、演奏者のウェブサイトでも料金の安いコンサートの情報には、冷たいあしらいをするようです。極端な場合入場料が無料であっても演奏者には出演料が払われるのですから、そのコンサート情報は差別せずに掲載するべきだと思います。
(財)日本交響楽振興財団の地方巡回公演 (July 6, 2003)
- 財団法人日本交響楽振興財団が“交響楽をひろく人々に”を目的として、日頃生のオーケストラ音楽に接することの少ない地方の青少年をはじめ多くの人々に、大編成のオーケストラ、一流のソリスト、指揮者による有名な作曲家の管弦楽曲を低料金で提供することを目的に「地方巡回公演」を実施しています。
- これらの公演案内について、日本交響楽振興財団のウェブサイトに日時、場所、出演者、演奏曲目など主な項目についての情報が掲載されてはいるのですが、料金が掲載されてはいません。
- またこれらの公演に出演するオーケストラのウェブサイトにもこれらの公演の料金のみではなく、公演があることすら掲載されていないサイトがあります。
- 最近の公演の例として、7月25日(金) 焼津市文化センター、7月27日(日) 修善寺町総合会館での公演につきましては、出演する新日本フィルハーモニー交響楽団のサイトにも、これらの公演情報は掲載されていますが、料金は掲載されていません。
- 修善寺町総合会館の公演につきましては、共催者の修善寺町教育委員会から公演の詳細な情報とパンフレットのイメージ・ファイルまで送ってきて頂きましたので、WMCの無料・激安コンサート情報に掲載させて頂きました。
- 「多くの人々に、・・・低料金で提供する」と謳っているのですから、是非、料金を提示して頂きたいと思います。
参考ページ:
(財)日本交響楽振興財団のホームページ
(財)日本交響楽振興財団のホームページ
ファイル交換ソフトは合法 (May 1, 2003)
- アップルコンピュータが "iTunes Music Store" を発表した日に先立って、音楽の流通にとって喜ばしいニュースが発表されました。
- 米カリフォルニア州の連邦地方裁判所がファイル交換ソフトの提供会社を合法とする判決を出したことを2003年4月25日にGroksterが発表しました。
- このサイトでは、かねてから著作権をたてにとって、ファイル交換ソフトを犯罪者扱いにする映画会社やレコード会社などの主張を批判してきました。
- ファイル交換ソフトを提供する会社が著作権法に違反していると言うなら、コピー機の製造会社も著作権法に違反しており、包丁や鉄砲の製造業者は、殺人幇助罪にもなりかねないのではないでしょうか?
- 他人の著作権を侵害しないことと個人の楽しみや勉強のために他人の著作物を複製したり改変することは相反することではありません。どんな天才芸術家でも始めは他人の模倣から出発しているので、これを禁止すれば、かえって創造の芽を摘むことにもなりかねません。
- この問題に関しては、著作物を創作した本人よりも、自分は何も創造しないのに、それを流通させることで利潤を得ている会社がファイル交換ソフトを問題にしているのも胡散臭い感じがします。
- これを機会に映画会社やレコード会社も旧態依然とした商売の方法を見直し、彼らの客である視聴者と彼らに商売の種を提供している著作者の双方が喜ぶ新しい著作物の流通方式を開発してもらいたいものです。
歓迎!アップルの "iTunes Music Store" (Apr. 30, 2003)
- 米国アップルコンピュータが米国時間2003年4月28日に "iTunes Music Store" と呼ぶ新しい販売方法を発表しました。
- "iTunes Music Store" は、音楽を簡単に見つけて、1曲わずか99セントでダウンロード購入できる革新的なオンラインミュージックストアです。新しいiTunes 4とともに提供されるiTunes Music Storeは、個人利用を目的としている限り、枚数無制限でCDに記録することができ、個人の楽曲利用権利の自由度を飛躍的に高めます。
- これは、以前から、私が主張してきましたインターネットを使った新しいビジネスモデル(事業形態)のひとつであると思います。
- 特に、これまでのコピープロテクトのようなやり方で、個人から、楽曲利用権利の自由度を奪う事業とは違うことが、決定的な良さだと思います。
- これを機に、この分野での競争が促進され、さらに良い楽曲の流通方法が生まれることを期待したいと思います。
芸能活動にかかる源泉徴収制度の撤廃に思う (Feb. 8, 2003)
- いよいよ、今年の4月から「芸能人の役務の提供を内容とする事業にかかわる報酬」を受け取る時には、法人であっても10%の法人源泉徴収が行われるという制度が撤廃されることになりました。
- この制度は、所得税法174条10項によるもので、昭和39年(1964年)の税制改正で設けられました。芸団協は、「泡沫会社だからという差別的扱い」としてこの税制を改めるよう永年運動を続けてこられました。今回の撤廃は、その働きかけが実ったものといえるでしょう。
- ただ、1964年にこの制度が開始された理由は、芸能関係団体が「泡沫会社だから」というより、納税額をごまかすような不健全な経営をする会社が目立ったからで、どんな小さな会社でも通常の収入に法人源泉は行われていません。法人源泉の対象となったのは、芸能関係以外では、一部の金融商品と競馬の馬主に対する賞金だけで、これらに共通していたことは税金逃れの元になっているケースが多かったからでしょう。
- 今回、撤廃が決まった背景には、芸能関係団体の経営改善努力が認められたものといえるのではないでしょうか?「芸団協緊急アンケート」によれば、芸能関係法人の90.7%が、その税務を公認会計士・税理士に委託して健全経営に勤めていることが示されています。
- さて、ここからがこの小論の本題ですが、芸能関係団体の活動方針について私が常々主張してきましたことは、芸能活動を金儲けの手段としてだけで捉えないようにせよということです。芸能関係団体の活動は、芸術家に活躍の場を与え、聴衆に楽しみを与えた結果、その報酬を得るのであって、報酬を得ることだけが目的なら暴力団の資金稼ぎと何ら変わるところがありません。芸能活動関係に法人源泉徴収が行われるようになった背景に当時の芸能活動関係にかかわっていた団体の中にこのような考えの団体があったからではないでしょうか?
- いわゆるレーベルというか音楽CDを作ることを事業としている会社にも音楽活動を金儲けの手段としてしか考えていない会社がかなりあると思われます。Napsterをつぶしてしまったのもこの考えによるものと思います。インターネットによる新しい音楽の流通方式に対して、この新しい媒体をいかに音楽のために利用するかでは無く、目先の利益にとらわれて、著作権保護という美名の下に古い流通方式を守ったわけです。
- 音楽事業にとって、レコード・CDなどのほかラジオ・テレビなどの電波媒体の利用は、開始されてからまだ100年も経っていません。その前の、ライブ活動のみに比べれば、事業の範囲が格段に増えたことになります。パソコンやインターネットもこの事業範囲を拡大する絶好の新媒体だと思いますが、現在の音楽事業者の中には、これらの媒体を敵視する事業者が多いことが問題だと思います。
- これらの媒体は、音楽事業に新しい事業の場を提供するものと考えて、新しいビジネスモデルを考え出すべきではないかと思います。この件につきましては、2002年4月2日にメーリングリストに投稿(下欄に再録)しましたので、それもご覧になった上で、ご意見がいただければ幸いです。
参考ページ:
(社)日本芸能実演家団体協議会(芸団協)のホームページ
(社)日本芸能実演家団体協議会(芸団協)のホームページ
デジタル社会の新音楽ビジネスモデル (Feb. 8, 2003)
(メーリングリストへの投稿の再録)
(メーリングリストへの投稿の再録)
この文は、2002年4月2日にメーリングリストに投稿した文章を再録したものです。
- 音楽CDにコピープロテクトをかけることに対して疑問を呈する意見をウェブに掲載しましたところ、賛否両意見が寄せられました。
- 賛成派は、アナログと異なりデジタルの場合は、コピーしても音質に変化が無いから云々という陳腐な意見で、これは結果的に音楽CDの消費者全員が違法著作ビジネスを行う人間とみなすことではないかと私は思います。
- 私は、デジタル社会における音楽産業のビジネスモデルについて議論しなければ、この問題の本質には迫れないのではないかと思っています。
- マルコーニによって無線技術が実用化されたとき、この技術は、1対1の通信に使うことが本命とされていました。無線は、受信機さえ用意すれば、誰でも傍受できるので、不特定の人に益する内容を発信しても代金の回収ができないことが最大の理由でした。
- 反面、ベルが実用化した有線電話技術は、不特定の人を相手にする放送に使われました。電話が実用に供された最初の例として大統領選の結果速報が有名です。有線の場合は、受信機の所持者が特定できるので、不特定の人に益する内容を発信すれば、電話機の普及につながり、代金の回収も容易だが、個人同士の1対1通信は、緊急事態でもなければ不要なので、そのために、高額の電話契約などをしてくれるとは思われていなかったようです。
- それがその後。主として、無線は放送に、有線は1対1の通信に使われるように変わったのは、放送事業や電話事業のビジネスモデルが確立したからです。
- もっとも最近は、これが再逆転して有線網はインターネットで不特定多数相手に、無線技術は携帯電話として1対1の通信に使われるようにもなりました。
- 現在、CD/RWなどの普及によって、CDが自由にコピーできたり、MP3などのファイルにして個人同士がCDのコピーをやり取りすることをレコード会社が問題にしていますが、個人が自分自身のために他人の著作物をコピーしたり、改変することを許さないことにすれば、音楽に限らず、芸術全般の発展に大きな齟齬をきたすことになると思います。
- 過去100年ほどの間に、レコードやラジオ、CDにテレビといった新しい媒体が、音楽産業をその前の時代とは根本的に変えてしまいましたが、現在また音楽産業に新しい変化の波が押し寄せているのではないかと思っています。