超音波医学会専門医。腎尿管結石・前立腺癌・肥大症の診断が得意です。 膀胱炎・尿道炎・男子不妊症では、院長自身が顕微鏡検査(尿・精液)を行います。 皮膚科は男性非露出部に自信があります。
スカンジナビア泌尿器科学会に演題を出すために、英語の勉強中。幼稚な英語ではなく、知的な英語で抄録を書くために。 Scandinavian Journal of Urology のサイトも覗いてみました。どんな論文が出ているか。 タイトルはすべて見ることができますが、全文を読みたければ有料になります。 でも所々、無料で公開しているものもあります。で、2009年1月号のこの無料の論文を読んでみました。
Open retropubic prostatectomy versus robot-assisted laparoscopic prostatectomy: A comparison of length of sick leave Lena Hohwü, Olof Akre, Knud Venborg Pedersen, Martin Jonsson, Claus Vinther Nielsen, Ove Gustafsson Scandinavian Journal of Urology and Nephrology Jan 2009, Vol. 43, No. 4: 259–264.
ダヴィンチをいち早く導入したスェーデンの大学病院とデンマークの大学病院の協同研究。 ダヴィンチは病気休暇を短縮できるか? 結果は、開腹手術の人の病気休暇は49日なのに対し、ダヴィンチだと11日でした。
病欠0日の人がダヴィンチ群には33%いたのに対し、開腹手術群には11%。 病欠0日の人の職業は、自営業、重役、エンジニアが多かった。 病欠0日の人を除くと、開腹手術の人の病気休暇は55日なのに対し、ダヴィンチだと26日でした。 開腹手術の人の方が、肉体労働者・低所得の人が多かった。
ランダム化比較試験ではないので、開腹手術の人のPSAが11.7なのに対し、ダヴィンチは7.7と病気の進行度にも差があります。 でも、手術方法をランダム化(くじ引きで決める)するのはまず不可能です。 2群間で患者背景が違う時に使用する統計手法がコックス型比例ハザードモデル。 ハザードというと瞬間死亡率(生存曲線の傾斜=微分値)のことが多いですが、今回は仕事に復帰できる率(瞬間仕事復帰率:休暇人数曲線の傾斜=微分値)。
瞬間仕事復帰率を、ダヴィンチかどうか、PSA値、グリーソンスコア(悪性度)、年収、どれくらい激しい仕事をする職業か、の関数として表現する多変量解析の結果、 ダヴィンチで手術すると開腹手術に比べ、瞬間仕事復帰率を2.13倍に高め、これは有意(p<0.001)であることが、示されました。 PSAは病院の記録から、病気休暇期間は健康保険基金から、職業は国民背番号のデータから、 といろんな形で保管されているデータを、国民背番号(national registration number)で簡単に結合できるスカンジナビアだからできる研究です。
2013年3月18日の院長ブログ原稿