コンサート鑑賞記

(1998年10月11日更新, 2019年4月20日表示方法のみ更新)

ここには、無料、激安コンサートや、クラシック音楽の伝統にはこだわらない特色のあるコンサートの鑑賞記録を掲載しております。

目 次

レクチャー & コンサート 20世紀音楽の鑑賞ガイド 第11回
作曲家が語る20世紀 II 〜高橋悠治氏を迎えて〜

演奏会の概要

  • 日時:1998年10月11日(日) 14:00開演
  • 場所:ルネこだいら 中ホール(西武新宿線・小平)
  • 出演:高橋悠治(ピアノ、お話)、下野戸亜弓(三弦・唄)
        鈴木理恵子(ヴァイオリン)、井上卿子(ピアノ)
  • 出演:伊藤祐二(司会・解説)
  • 曲目:高橋悠治/さまよう風の痛み(ピアノ独奏)
        高橋悠治/冷たい風吹く地上から(ヴァイオリン独奏)
        高橋悠治/風がおもてで呼んでゐる(三弦弾き語り)
        高橋悠治/夕顔の家(ピアノ・三弦)
        高橋悠治/かえりみ(三弦2重奏・唄)
        チュー・シャオソン/JI#7(ヴァイオリン独奏)
        ラモン・パガヨン・サントス/Gong-an(ピアノ独奏)
  • 入場料:2000円(全席自由)

演奏会場

ルネこだいらは、小平駅南口から歩いて2〜3分のところにあります。

中ホールは、オープンステージ変換舞台を備えたホールで、舞台のしつらえ方によって、客席数も異なります。今回は、客席数が400席弱で、70%位の客数でした。

レクチャーの概要

伊藤祐二さん(1956年生まれ、作曲家)の質問に、高橋悠治さんが答えるスタイルで進められました。

高橋悠治さんの話
"さまよう風の痛み"
楽譜には書けない表現がある。レガートに音の粒をそろえて歌うようにと言う、これまでのピアノの伝統的な弾き方と、ことごとく対立する弾き方を要請している。メロディーの下に伴奏がつく安定した形ではなく、メロディーは中ほどにある。

"冷たい風吹く地上から"
ヴァイオリンの弓の張りをゆるめることにより、コントロールを困難にし、音を不安定にしている。左手のピッチカートと弓を同時に弾く効果も狙っている。

"風がおもてで呼んでゐる"
本来人差し指で押さえるところを中指で押さえるように指定するようなことで、三味線の勘所を変えている。語りのアクセント、抑揚を東北の花巻地方の言葉に合わせるようにしてある。

伊藤祐二さんの質問
なぜ細かく弾き方を指定しないのか?
高橋悠治さんの答え
そうすれば、演奏家の自発性がなくなる。事前にどんな音を出すかをイメージして、それを実現するということではなく、音を出す手順を提案する。人と時によって、異なる音が出る。

"夕顔の家"
源氏物語の「夕顔の巻」にもとづく菊岡検校作曲「夕顔」の一節を素材として紡ぐ・巡る・連れる・付けるの四通りの演奏法を使う。

"かえりみ"
タイの僧院で毎日唱えられる仏典の言葉のパーリ語での朗誦と、"夕顔の家"と同じく菊岡検校作曲「夕顔」から旋律を借りた日本語訳の唄の言葉から引き出される想念を三弦の手によって瞑想する。

伊藤祐二さんの質問
これまでの伝統的な演奏法でも、弾く人や時によって違った演奏がされる。伝統の枠内でも出来ることではないか?
高橋悠治さんの答え
伝統の枠の外にひきずり出すことが必要なのだ。技術や文化は、洗練されるほど狭くなる。伝統の枠を出て行く先を示しているわけではない。むしろ伝統が作られる前に戻っている。今のようになる前は、もっと可能性があったはずだ。

伊藤祐二さんの質問
今回の会場の照明は普通の演奏会と違って舞台も客席と同じように薄暗くされているが、その理由は?
高橋悠治さんの答え
音は明るいほうから暗いほうに届く。普通の照明では、舞台から客席に音がちゃんと届くように考えている。音はちゃんと届か無い方が良い。客席から舞台を覗き込んで聴くように仕組んでいる。

"JI#7"
この曲の題名は、漢字で"静水"と書くが、この言葉に意味があるのではなくその発音(ジー)に意味がある。

"Gong-an"
この曲の作曲家、ラモン・パガヨン・サントスは、フィリピンの人で、フィリピンの学校を出た後、アメリカで民族音楽を研究した。これは、ゴングの音楽をピアノ曲にしたもので、ガムランのようには洗練されていない。

伊藤祐二さんの質問
これらの選曲には、どんな共通点があるのか?
高橋悠治さんの答え
日本の若い作曲家の多くは、西洋の伝統の延長線上にある前衛音楽をやっている。かれらは良くやっているし、成功するだろう。しかし、ヨーロッパ人でも出来ることをやっている。ここに取り上げた2人は、アジアの伝統を前提に、伝統を作り直すという共通の課題を持っている。

演奏の様子と感想

"さまよう風の痛み"
高橋悠治さんご自身が弾かれました。曲そのものは、特に大きな盛り上がりもない静かな曲でした。 高橋悠治さんが強調されていました弾き方につきましては、西洋音楽の伝統に毒された私の耳には、前衛的な演奏と言うよりへたな演奏としか聞こえませんでした。

"冷たい風吹く地上から"
無伴奏のヴァイオリン独奏曲で、鈴木理恵子さんが弾かれました。これも新しい試みと言うより、慣れない楽器で弾いているような感じがしました。左手のピッチカートと弓を同時に弾く効果もパガニーニやサラサーテによる試みの殻を破ったといえるほどの効果とは思えませんでした。

"風がおもてで呼んでゐる"
下野戸亜弓さんの三弦と唄(と言うより語り)で演奏されました。ロビーに展示してありました楽譜では、語りのところは、曲線でイントネーションが書かれていました。私は、三弦の伝統的な演奏には、あまり親しんでいないため、どこが新しい試みか良くは分かりませんでした。

"夕顔の家"
高橋悠治さんご自身のピアノと下野戸亜弓さんの三弦で演奏されました。演奏されてているお2人は、いかにも楽しそうでしたが、聞いている方はさほど面白いと思えませんでした。この曲は、他人の演奏を聞くより自分で演奏に加わる方が楽しいように感じました。

"かえりみ"
高橋悠治さんご自身の三弦と朗誦、下野戸亜弓さんの三弦と唄で演奏されました。下野戸さんの発声法は、伝統的な邦楽の発声法で、ベルカント唱法とは全く異なる発声法でしたが、マイクを通さず会場の隅々まで聞える、よく響く声でした。人間の声も楽器だと思えば、その演奏(発声)法は、ベルカントだけが正しいのではなくほかにもいろいろな可能性があることにこの時気づきました。高橋さんの伝統の枠の外にひきずり出す、伝統が作られる前に戻ると言われることの一部が理解できたように思えましたが、私の理解不足かもしれません。

"JI#7"
この曲も"冷たい風吹く地上から"と同様、無伴奏のヴァイオリン独奏曲で、鈴木理恵子さんが弾かれました。この曲が音楽だと言うなら、木の葉のざわめきや渓流の流れる音も音楽だと思ったのは、私だけでしょうか?二胡などで聴かれるようなポルタメントの下降音などに中国の伝統音楽の一端は感じられましたが、それ以上に先鋭な前衛音楽という感じでした。

"Gong-an"
井上卿子さんのピアノ独奏で演奏されました。この曲は、確かに西洋の伝統音楽とは異なるとは思いましたが、これまでの中では、"かえりみ"のなかの菊岡検校の曲による唄と同様、一番音楽として楽しめた曲です。井上卿子さんのピアノの奏法も好感が持てました。

 


白石 准のピアノの部屋 Vol.10

演奏会の概要

  • 日時:1998年5月22日(金) 19:00開演
  • 場所:門中天井ホール<アート・キッチン>(営団地下鉄東西線・門前仲町)
  • 出演:木ノ脇道元(フルート)、白石 准(ピアノ)
  • 曲目:ショパン/ノクターンOp.27より嬰ハ短調、変ニ長調(Pf)
        ゴーベール/ノクターンとアレグロスケルツァンド(Fl,Pf)
        ドップラー/ハンガリー田園幻想曲(Fl,Pf)
        ジャック・イベール/小品(Fl)
        アンリ・デュティユ/子守歌のような前奏曲(Pf)
        アルベール・ルーセル/笛吹きたち(Fl,Pf)
        アンリ・デュティユ/即興曲(Pf)
        アンリ・デュティユ/ソナチネ(Fl,Pf)
  • 入場料:3000円(全席自由:インターネットで予約すれば、2500円)

演奏会場

門中天井ホールは、門前仲町駅から徒歩2〜3分のところにあるビルの最上階(8F)にある小さな(100人も入れば満員?)ホールです。 舞台はなく、演奏者と聴衆が同じフロア(客席は、後ろほど高くしてあるので、逆に客席の方が高い?)なので、まさに、ホーム・コンサートの感じです。

前々回(前回は行けませんでした)の、「白石 准のピアノの部屋 Vol.8」のときより、客数が少なかったのですが、このホールの場合は、今回くらいの客数の方が 反響が多少多くなって、音響的には良いように感じました。ちなみに、私が座った場所は、最前列の左から3番目です。 これは、前々回、遅れて行ったため、そこしか空いていなかったのですが、今回は、前々回と比較するため早めに行って、同じ席に座りました。

演奏のようす

最初の曲が始まる前に、フルートの木ノ脇道元さんの紹介を兼ねて、短い即興演奏をされましたが、これが大変印象的で良かったためか、最初のピアノ独奏は、あまり・・・(-_-;)
ショパンは、いろんな人の演奏を聴いてきましたので、白石 准バージョンのショパンには、あまり馴染めなかったせいなのかもしれません。

その後の曲は、有名なドップラーのハンガリー田園幻想曲を除いて、初めて聞いた曲ばかりでした。それらの曲は、全体的に私の趣味に合った曲が多く、十分楽しめました。 特に、イベールの曲とルーセルの「笛吹きたち」の2曲目と4曲目が良いと思ったのですが、白石さんは、「笛吹きたち」3曲目について、かなりの力を入れて演出し、説明されていました。

アンコールの押し売りは、誰もが知っている曲のオンパレードで、大変楽しい雰囲気でした。 ただ、サティの「ジュ・トゥ・ヴゥ」は、本来は人の声で歌う曲ですが、私はこれまで、ピアノ独奏でしか聴いたことがありませんでした。 今回のフルートの演奏は、数箇所、ピアノ独奏曲との乖離が気になるところがありました。これが、元の歌に近いのかもしれませんが・・・

その他

今回は、単にフルートやピアノを演奏するということ以外に、楽しい演出があり、大変楽しめました。
白石さんによれば、今回は、コンサート前日にFAXで案内した人を除いて、WWWと電子メール以外での宣伝活動は一切しなかったとのことです。それでも50人もの人が集まったと言うことは、お金をかけて、パンフレットなど作らなくとも集客方法はあるということでしょうね。

次回の予定は、Jun's Cyber Pianoroomに掲載されていますので、まだ行かれたことの無い方は、一度行ってみられてはいかがでしょうか。


新日本交響楽団 第61回定期演奏会

演奏会の概要

  • 日時:1998年5月10日(日) 14:00開演
  • 場所:かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール(京成電鉄・青砥駅)
  • 出演:川畠 成道(バイオリン)
  • 指揮:高橋 誠也
  • 曲目:ベートーベン/エグモント序曲
        チャイコフスキー/バイオリン協奏曲
        チャイコフスキー/交響曲第4番
  • 入場料:1000円(全席自由)

演奏会場

演奏会場のかつしかシンフォニーヒルズは、京成電鉄の青砥駅から徒歩で5分のところですが、私の家(横浜市旭区)からは、途中渋滞もあり、2時間以上かかってしまいました。
演奏が行われましたモーツァルトホール(かつしかシンフォニーヒルズには、ほかにアイリスホールもありますが)は、1、2階席の他にバルコニー席を持った立派な音楽専用ホールです。
私は会場への到着が遅れたため、良い席には着けませんでした。どうせ良くないのなら、いっそのこと話の種にバルコニー席に座ろうと、休憩時間中に移動しました。
S席やA席といったランク付けによる入場料では、バルコニー席が極端に安価に設定されている理由が良く分かりました。普通に座ればオーケストラの半分しか見えません。 身を乗り出しても全員は視野に入りませんでした。不思議なことに、音響効果は悪くないので、目をつむって聴いていれば別にとやかく言うほどひどくはないのですが・・・

演奏のようす

余裕を持って家を出たはずが、思わぬことで、開演5分後に、会場に入りました。既に1曲目のエグモント序曲が始まっていましたので、ロビーでスピーカから聞こえる音を聞いていました。 そんな訳なので、エグモント序曲に関しましては、何も言うところがありません。

2曲目のチャイコフスキー/バイオリン協奏曲は、ソロの川畠成道さんが、なかなか達者な演奏を聴かせてくれました。細かいことを言えば、いろいろあるのですが、全体としては、よく弾かれたと思います。 ただ、私の好みから言わせて頂ければ、もう少し甘ったるい演奏でも良かったのではないかと思いましたが、聴衆の評価は高く、1楽章と2楽章の間で、ソリストに盛大な声援と拍手が送られました。
オケも全体的には良かったのですが、バスーンがソロになるところで、全体のバランスを壊すような大きな音を出していたのは、頂けませんでした。

3曲目のチャイコフスキー/交響曲第4番は、出だしのホルンの強奏が、ただ大きければ良いでしょうとばかりの、ひどい音だったので、がっかりしましたが、その後は、まずまずの演奏でした。

アンコールのエルガー/愛の挨拶の出だしは、本日一番の出来と思える名演奏でした。中盤以降また、木管楽器に雰囲気を壊され、その後は、出だしほどの良い演奏とはならず、残念でした。

前回の第60回定期演奏会のときにも感じましたが、このオケは、オーボエとクラリネットに名手がいるのですが、他の木管奏者は、やや問題のように思います。金管の方が、木管より抑制が効いた良い演奏をするオケです。

ここまで読まれた方で、新日本交響楽団を聴かれたことが無い方は、新日本交響楽団があまり上手でないアマチュア・オーケストラだと思われるかもしれませんが、そうではありません。 ただ、昨年の第60回定期演奏会のできがあまりにも良かったので、ついあら捜しのようなことを書いてしまいました。 第60回定期演奏会の後で、私が、ピアニストの白石 准さん宛てに出したメールの中に書きました感想文を、ご参考までに引用します。

 昨夜(10月18日)は、アマチュアオーケストラの雄(?)新日本交響楽団の第60回定期演奏会に行ってきました。
 場所は、上野の東京文化会館大ホールで、出し物はブラームス没後100年の記念とかで、ハイドンの主題による変奏曲と、ドイツレクイエムでした。
 特にドイツレクイエムは圧巻で、80人ほどのオーケストラに150人を超える合唱団の迫力は相当なものでした。ソロの緑川まり(ソプラノ)さんと、末吉利行(バリトン)さんもさすがプロと思わせる歌唱力で、マナーも良く大変楽しめました。
 会場の音響効果も、ほぼ満員だったこともあってか、非常に良かったと思いました。

その他

料金は、1000円と言うことになっておりますが、実際は、無料です。前回も今回も新日本交響楽団のホームページに出ているメールアドレスにメールを出してお願いしましたところ、招待状を送ってきてくれました。 もし未だ新日本交響楽団をお聴きになっていないなら、次のコンサートのときにメールで招待の依頼をされてはいかがでしょうか。

「未来からくる演奏家を聴く会」

演奏会の概要

  • 日時:平成10年4月21日(火)18時45分開演
  • 出演:白水 芳枝(ピアノ)
  • 場所:中央工学校創立85周年記念館STEP
  • 曲目:モーツアルト/ピアノ・ソナタへ長調 KV.332
        ラヴェル/鏡より 1、蛾 2、道化師の朝の歌
        シューマン/交響的練習曲 作品13

演奏会場

演奏会場は、JR京浜東北線及び営団地下鉄南北線の王子駅から徒歩5分ほどの所にある中央工学校創立85周年記念館STEPでした。真ん中の外階段(?)を上がって、3階から入る多目的スペース2・3で行われました。
ベンチ席が横3列、縦7列のスペースです。公称336名収容となっていますので、公称どおりの計算では、一つのベンチに14人が座ることになりますが、普通に座ればせいぜい8〜10人が座ると言う感じでした。
今回は、聴衆が40名程度しかおられませんでしたが、席は、半分近く埋まっていると言う感じでした。

演奏のようす

コンサートが開始される前に、主催されている宮島さんの挨拶(この会の趣旨説明)と音楽評論家の藤田由之さんの解説が合わせて15分ほどあり、実際に演奏が開始された時間は、19時頃からでした。
白水さんの演奏は、第25回アトリウムコンサートでも聴きましたが、全体的な印象は、今回の方が良く言えばリラックスしていると言う感じでした。
シューマンの交響的練習曲 op.13は、本人の表情を見る限り、必ずしも満足の行く演奏では無かったようでしたが、私は、前回にも増して、なかなかの良い演奏だと思いました。
ただ、楽器は、前回のベーゼンドルファーに比べるとちゃちな感じは否めませんが、会場の音響効果は、テレコムセンタービルのアトリウムほどひどくはないので、まずまずではなかったかと思いました。

その他

コンサートが終わってから主催者の宮島さんと、わずかな時間、会話をしました。私は、今回の様子だけから見る限り、運営を続けるのは、経済的に大変ではないかと思い、聴衆を集める宣伝活動にもう少し力を入れられては、との趣旨の発言をしました。
それに対する宮島さんの答えは、「宣伝をしても無名の人の演奏を聴きに来る人は、ほとんどいない。日本におけるこの現実は、個人の力では変えられない。60名を超える会員が支えてくれているから続けられる。」と言った趣旨の話をされました。
宮島さんが指摘された日本人のブランド志向は、なにもクラシック音楽に限ったことではないので、確かにこの気質は簡単には変えられないと思います。しかし、芸術家の卵を孵すのには、宮島さんも指摘されていますように、聴衆の力が大きいと思います。 何とか、底辺を広げる方策を考えたいものです。

第24回アトリウムコンサート

演奏会の概要

  • 日時:平成10年3月5日(木)12時15分から12時55分まで
  • 出演:塩塚 美知子(ピアノ)
  • 場所:テレコムセンター1階アトリウム内
  • 曲目:ラフマニノフ/プレリュード op.32-12 gis moll
    /エチュード「音の絵」より op.39-5 es moll
        ムソルグスキー/展覧会の絵

演奏会場

演奏会場は、東京臨海副都心の東京テレポートタウンにあるテレコムセンタービル1階の 5層吹き抜け、約45m四方という広大なアトリウムの真ん中で行われました。
ベーゼンドルファーのコンサートグランドピアノをコの字型に取り囲んで90席ほどのいす席がおかれ、 いす席の後ろには、スナックのテーブルが20ほどありました。このテーブル用のいすを含めますと約170人ほどが、腰掛けて演奏が聴けます。
私は、コンサートが始まる直前に行きましたが、いす席は、半分も埋まってなく、ピアノに向かって左前の良い席に座れました。

演奏のようす

コンサートが開始されたときには、いす席が半分ほど、テーブルが満席と言う状況でしたが、テーブルについている人は、演奏を聞くと言うより、食事をしているようでした。
最初の曲が演奏され始めますと、会場の音響効果の特殊性が気になりました。まるで、野原の真ん中で演奏しているような感じで、ピアニッシモの繊細さは、ほとんど意味が無い(聞き取れない)ように思えました。
そんなことに気を取られているうちに1曲目が終わりましたが、一瞬気がつかず、慌てて拍手をしようとしましたが、周りの人たちにそのような様子が無く、演奏者も次の曲を弾く様子だったので、そのまま2曲目に移りました。
1つの曲の楽章の間ではなく別の曲なので、よほど演奏がひどくない限り拍手すべきなのではないのかと思いましたが、後で聞きましたら演奏者自身がそれを望んでいたようです。
2曲目が終わる頃には、人も増えて、いす席は、8割程度埋まっていました。
3曲目のムソルグスキー「展覧会の絵」は、大変な熱演で、音響効果の悪さが残念なほどの良い演奏でした。この曲の演奏時には、いす席はほぼ満員で、立ち見の人もかなり増えていました。
アンコールに弾かれた曲(ラフマニノフのプレリュード op.32-5?)は、初めて聴きましたがなかなか良い曲だと思いました。

その他

4台ものテレビカメラで演奏会の様子を撮影していました。後で聞きましたら、東京テレポートタウン内向けの双方向都市型CATVと、東京を中心としたUHF局東京メトロポリタンテレビジョン(MXTV)が取材していたそうです。ただ音を聞くだけなら、あの会場で聴くより録画の方が良く聞こえるのではないかと思います。生演奏の上に、その気になれば、出演者とも話が出来ることが、音響効果の悪さを打ち消して良かったと思います。また時間が取れれば行きたいと思います。

第25回アトリウムコンサート

演奏会の概要

  • 日時:平成10年3月26日(木)12時15分から12時55分まで
  • 出演:白水 芳枝(ピアノ)
  • 場所:テレコムセンター1階アトリウム内
  • 曲目:ベートーヴェン/ピアノソナタNo.30 op.109
        シューマン/交響的練習曲 op.13(1852年版)
        主題と12の「練習曲」
        ※1852年版は初版の第3番と第9番の練習曲が除かれているが、今回は両曲を除かずに演奏された。

会場のようす

ほぼ、前回と同様の状況でした。ただ、慣れたのか、前回ほどは、周りの環境が気になりませんでした。

演奏のようす

2曲とも、そつなく弾いたと言う感じでしたが、最初のベートーヴェンのソナタよりシューマンの交響的練習曲(変奏曲)の方が良かったように感じたのは、個人的な好みの問題かもしれません。 特に、フィナーレは、交響的と言う名に恥じない力演でした。

その他

白水 芳枝さんのコンサートが4月21日に開かれることを知りました。これについては、「未来からくる演奏家を聴く会」を見て下さい。