クラシックコンサート初体験

(1998年 5月 9日掲載 → 2018年11月22日更新)

JPAMの "encore" について

 ここでは、JAPAM(社団法人日本クラシック音楽マネジメント協会)発行の季刊誌 encore 6 (1998 Spring)に掲載されました記事をもとにした私見を掲載しております。
 (2018年11月22日の更新は、スマホにも対応出来るよう体裁を変えただけで、内容は、1998年掲載時のままです。)

目次

  1. JAPAM主催 第2回フェスティバル開催
    「クラシックはいかが?〜25歳以下の若い人のためのコンサート」
  2. テーマ&トーク「聴衆・観客拡大のためのマーケティング」
  3. セミナー「民間資金を得るためには・民間助成財団の場合」

内容

  1. JAPAM主催 第2回フェスティバル開催
    「クラシックはいかが?〜25歳以下の若い人のためのコンサート」
  2. 記事概要

     この記事には、1998年3月29日(日)に開演されましたコンサートに関する斎藤珠理(朝日新聞学芸部記者)さんの批評と編集部の聴衆に対するアンケート結果の紹介が含まれております。

     このコンサートにつきましては、以前このサイトでも紹介しました。

    コンサート批評

     斎藤さんの記事は、全体的に好感が持てました。ただ、コンサートの内容に関しましては、実際に聞いたわけではありませんので、斎藤さんの批評に同意できるかどうかは、なんとも言えません。

     プログラムに対して無料だったのは評価できる。ただ、せっかくの企画の趣旨や意図が、どこにも説明されていない。と書かれておりましたが、これに関しましては、もしそれが事実なら、事務局の手落ちではないかと思います。 このコンサートの案内チラシには企画の趣旨や意図が書かれていましたので、事務局としては、コンサートに来た人は当然知っていると思われているのでしょうが、大事なことは、機会がある毎にしつこいくらい説明したほうが良いと思います。

     また、クラシック音楽に興味を持った人への情報提供も欠けている。・・・(中略)・・・この演奏会で何かを感じてもらえたら「鉄は熱いうちに打て」。すぐ次の演奏会への橋渡しをしなければ、この企画は意味を持たない。とも書かれています。
     斎藤さんが指摘されていることは、クラシックのコンサートによく行く人と、ほとんど行ったことが無い人では、情報の内容や提供方法を変えなければいけないということだと思います。これは、他人事ではないと考えさせられる言葉です。

    企画意図は達成されたか - アンケートに見る聴衆・観客の反応

     ここには、アンケートの集計結果と個別に記入された感想文の中から、編集部が抽出した感想文が2ページにわたって掲載されていますが、表題の企画意図は達成されたかに関する主催者側あるいは編集部の考えは紹介されていないため、読者が勝手に判断しろと言われているように感じます。

     そこで、以下、私が勝手に読み取っていこうと思います。

  3. テーマ&トーク「聴衆・観客拡大のためのマーケティング」
  4. 記事概要

     この記事と次の記事は、1998年2月16日から18日までの3日間開催されました舞台芸術フェアの催しの一部を報告されたものです。
     このテーマ&トークは、標題のテーマについて、JAPAMが調査した報告書「クラシック音楽コンサート市場活性化のための調査研究報告書」を元に報告・意見交換されたことを要約したものです。 報告者は、実際に調査を担当された文化科学研究所の高橋利枝さんとJAPAMアート・マネジメント委員会の原源郎さんです。
     ここに記された内容を、私なりに2つの項目に再要約し、私見を述べたいと思います。

    マ−ケティングの基本

    <記事要約>
     聴衆拡大を考える場合、供給者側の視点が強く働き、受容者側の実態が把握されてこなかった。この調査が対象とした地方公共ホールでは、初心者向けのプログラムを組むことが多いが、若い人が集まらないと言う。 広報活動として、「市報」に載せる、コンサートに来た人にチラシを配るなどしているが、若者は、「市報」を見ないし、コンサートに行かない人は、チラシも入手できない。そこで、「クラシック・ファン」の人数、情報源、チケット入手先などの実態を明らかにすることが重要。

    <私見>
     この問題は、数十年前に製造業で言われていたことと基本的に同じだと思います。この業界では、マーケティングらしいことはやってこなかったと言うよりも、公共機関を相手にしているからで、公共機関は、本来マ−ケティングなどやらないので分からないだけではないかと思います。
     商売するなら、自分が売りたいものを買ってくれそうな見込み顧客について良く調べ、そのお客さんにあわせて、買って頂く努力をするのは、マ−ケティングの基本中の基本でしょう。
     何を今更、と言う感じがしないわけではありませんが、これが実態なら、この実態を前提にして考えなければならないと思います。

    クラシック・ファンのタイプ

    <記事要約>
     聴衆の動向を把握して、セグメント化するために、クラシック・コンサートのチケット購入経験者対象のアンケート調査を実施(700人中、416人回答、回答率 59.4%)した。チケット購入の頻度によりA〜Eの5グループに分けた。

    チケット購入回数
    マ−ケティング上の位置づけ
    年25回以上コンサートに極めて熱心で、西欧諸国と同じ雰囲気、システムを求めるが、目は、クラシックを知らない人には向いていない。ニーズは、チケットをもっと安く、良い席へのこだわりが強い。 オピニオンリーダとして周囲を引き込んでもらう仕掛けを作る。
    年13〜24回男性の比率が最も高い(5割強)。有名な出演者に引かれる。ニーズはもっと安く、もっと開演時間を遅く。Aより若く、忙しい。お金もそう無い。 阻害要因が明確なので、それを取り除けば回数増加を見込める。
    年7〜12回社会参加型で友人も多い。B同様、有名な出演者に引かれる。ホールへの依存度が高い。近くにホールができ、情報が入るようになってから行くようになった。
    年3〜6回Cより少し消極的
    年0〜2回有名なアーチストでも、曲名・場所・時間を知らせても、ほとんど行かない。 数が多いのが魅力。働きかけ方と知らせ方を考えることだ。

    <私見>
     コンサートに来てもらう聴衆を調査するのだから、チケット購入回数で分けるのは、素直な分け方だとは思いますが、本来の趣旨からすれば、クラシック・コンサートのチケットを購入したことが無い人についても調べてもらいたかったと思います。
     ここでは、一応網羅的に調べており、どこかのセグメントを重点的に検討する、すなわち、優先順位には触れられておりませんが、公共ホールとしては、少なくともC以下、できれば、Eか、この調査の対象外の1度もコンサートに行ったことが無い人に対する対策を考えるべきではないかと思います。
     そんな目で、上の表を見ますと、「有名なアーチストでも、曲名・場所・時間を知らせても、ほとんど行かない。」人への対策として、「働きかけ方と知らせ方を考えることだ。」では、解決にはならないと思いますが、いかがでしょうか? このような対策は、情報が入って、会場が、そう遠くでなければ行きそうな、Cあるいは、C予備軍の人たちには、利き目があるように思います。
     ここまで調べられたのなら、E及び、その外側の人たちについて、さらに突っ込んだ調査をされることを期待したいと思います。

  5. セミナー「民間資金を得るためには・民間助成財団の場合」
  6. この記事を取り上げた狙い

     実際にコンサートを開催しようとする人以外には、役に立たない記事のように思われるかも知れませんが、良い音楽を安く聴けるようにするには、そのようににする仕組の一端を知ることも必要だと思いましたので、ここに取り上げました。
     個別の会社や個人から直接、経済的な支援を得る以外にも方法があることを学ぶことが狙いです。この記事内容に関しましては、あえて私見は述べません。

    記事概要

     この記事は、表題のテーマに関して、(財)セゾン文化財団の片山正夫さんと久野敦子さんが講演された内容を要約したものです。内容は、財団法人とは何か、から始まり、助成財団なかでも芸術文化関係の助成財団の活動についての説明されています。 次に、財団に助成を申請するためのノウハウについて語られています。

    財団とは何か

     財団とは、次のように定義される。

     財団には、事業型と助成型がある。コンサートを自ら主催したりするのは事業型で、第三者の事業を経済的に支援するのが助成型である。
     全国に1万3千ある財団のほとんどが事業型財団で、助成型財団は、千から2千ほどしかない。その内3割が、地方自治体の公的資金による財団で、残りが民間資金による財団である。  芸術文化活動への民間の助成財団は、23団体あるが、このうち22団体が音楽分野を助成対象としている。

    助成の現状

     財団の収入源は、利息である。現在のような低金利下では、助成できる金額が少なくなる。
     財団には、文書によって定められた目的・使命があり、これを踏み外すことは出来ない。財団にとっては、いかに効率的・効果的にこの使命を達成するかが課題となる。
     (この後、セゾン文化財団の具体的な例が紹介されていますが省略します。)

    助成の申請

     助成の申請を行うには、まず、自分の企画の中身を確認して、どこの財団に持っていけば良いかを調べる。財団についての情報を得るには、(財)助成財団センターに行くこと。また、「メセナ白書」(企業メセナ協議会)も役に立つ。
     自分のやりたいことは明確だが、相手(財団)の目的・使命を知らないケースが多い、相手を良く知り、どこをついたら落ちるかを考える。
     (相手を調べる具体的な方法、優れた企画書の条件、財団との接触方法が詳しく紹介されていますが省略します。)

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