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予防医学と対策型健診:医学Vs政策:かみ合わない論争


昨日のNHK19時半からの特報首都圏:メタボ対策の最前線では、メタボ健診について二人の医者が登場して意見を述べました。

聞いていて思ったのは、

まだ動脈硬化になっていない健康な人たちが対象で、その中からメタボ予備軍を見つけようとしている医者と

対策型健診で皆に強制したら、すでに動脈硬化になっている人たちも含まれる、そうしたら降圧剤投与はかえって危険と指摘する医者

の意見、どちらも正しい意見ですが、健診の対象者として別の母集団を想定しているので、議論はかみ合わないな、ということでした。

肥満学会は、腹囲85センチが内臓脂肪面積100cm2とよく相関する、というデータを出して、腹囲85センチ以上の人に注意を促す事にしたのでしょうが、

これが、政策となって、対策型健診として皆に腹囲測定を義務付けたところで、おかしくなってしまったんですね。

PSA健診にしても、対策型健診として強制したらおかしなことになります。

PSA健診は、オプションとして自己負担1000円程度を徴収している地方自治体が多く、腹囲測定のような強制ではありません。

仮にPSAの自己負担を0円として、50歳以上の男性に強制したとします。

PSAが異常だったとき、泌尿器科を受診してくれるか、前立腺針生検が必要だったら受けてもらえるか、前立腺癌が見つかったらEDになるかもしれない治療を受ける用意があるか、

これらの同意を得ないまま、PSA健診を対策型健診として強制しても前立腺癌死亡率は下がらないわけです。

特定健診も腹囲85cm以上なら(こんなの健診を受けなくてもわかりますが)、特定保健指導をしっかり守り、動脈硬化にならないように頑張る決意があるか、それを確かめてからでないと、特定健診は生活習慣病を減らせない、と思うのですが。

そうでないと、特定健診の時だけ腹囲85cm以下になるようにするアイテムだけが売れる、という変なビジネスを産むだけ、のような気がするのですが。
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