木村泌尿器皮膚科

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超音波医学会専門医。腎尿管結石・排尿障害の診断が得意です。 ここは、院長日記の倉庫です。


アボルブは前立腺癌を予防したか



常連の患者さんから、9月にリクエストされ、アボルブのMRさんからは2週間ぐらい前にいただいていた論文。
Effect of Dutasteride on the Risk of Prostate Cancer
Gerald L. Andriole, M.D., David G. Bostwick, M.D., Otis W. Brawley, M.D., Leonard G. Gomella, M.D., Michael Marberger, M.D., Francesco Montorsi, M.D., Curtis A. Pettaway, M.D., Teuvo L. Tammela, M.D., Claudio Teloken, M.D., Ph.D., Donald J. Tindall, Ph.D., Matthew C. Somerville, M.S., Timothy H. Wilson, M.S., Ivy L. Fowler, B.S.N., and Roger S. Rittmaster, M.D. for the REDUCE Study Group
N Engl J Med 2010; 362:1192-1202April 1, 2010
すぐに読み始めたのですが、プロペシアの論文に比べて見劣りし、目新しい話もないので、サマリーを書かないままになっていました。
見劣りする点の1:症例数が7000例と、プロペシアの論文3分の1。プロペシア論文の対象者は19000人。
2:フォローアップ期間が4年。プロペシアは7年。
3:対象は、PSAの軽度上昇で6~12箇所生検を1回だけ受け、ガンが見つかっていない人。プロペシア論文の対象者はPSAが正常な人たち。
つまり、症例数が各群3000人と少なくフォローアップ期間も4年と短いのに、有意差を出すため、4年以内にガンが見つかる可能性の高い人たちを集めているのです。
結果は、
アボルブ群の方が対象群より、2年目も4年目もガンが見つかる数は少なかった。
これは「大人しい」ガンで見られる傾向で、「たちの悪い」ガンは、2年目では同じぐらい見つかり、4年目ではアボルブ群の方に多く見つかった。
これをどう解釈するかですが、難しいです。プロペシア論文と違い、PSAが高い人達が対象ですから。
1回目の生検でガンが見つからなかった人たちが、2年後に見つかった場合、それはその2年間に発生したのか、という問題。
1回目の6~12箇所生検で刺さなかった場所にあったガンが、2年後に見つかった、と考えるほうが妥当かもしれません。
とすれば、この実験は前立腺癌予防実験と言うより、アボルブは、2回目の生検の陽性率にどう影響するか、を調べた結果と考えたほうがよいかもしれません。
アボルブはホルモンが効く「大人しい」ガンを縮めてくれるが、そのせいでホルモンが効きにくい「たちの悪い」ガンだけが後で見つかりやすくなる、とも考えられます。

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