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点滴ルートの確保


3月に入って、前立腺生検が5回(先週3回、今週2回)ありました。
前立腺生検では、まず点滴を刺します。次に仙骨麻酔をし、肛門に超音波の機械を入れ、超音波の画像を見ながら、前立腺に針を刺します。
肛門に入れる超音波の機械で博士号を取りました(当時の教授に付けてもらった、私のあだ名は「棒屋」)。
そのころ、腎臓に穴を開ける必要がある腎不全の患者さんに、全身麻酔下の手術ではなく、超音波で見ながら局所麻酔下で管を刺す技術が開発され、それをやるのも、超音波を研究テーマにしているグループでした。
超音波の装置を、レントゲン室なり、手術室なりに運ぶという作業(東大の看護師さんはそんな雑用してくれません)を伴うため、何となく、患者の主治医ではなく、超音波研究グループの仕事になっていました。
したがって、超音波で前立腺全体を観察するのも、狙ったところに針を刺すのも得意です。
ですから前立腺生検は得意です。
点滴や仙骨麻酔も下手ではないつもりですが、3月に前立腺生検を行った5人のうちの1人では、点滴が上手く行きませんでした。
合成樹脂性の長い針で2回失敗し、仕方がないので、金属製の短い針(体を動かすと外れやすいので、手術時には向いていません)でチャレンジしても失敗、4回目に肘関節(手術中、関節を曲げられなくなります)にやっと入りました。
患者さんと対面するのは3度目でまだ充分な信頼関係はできていません。
「この医者、ひょっとしてやぶ医者?」と思われていないか、また失敗したら、怒って帰られてしまうのではと思うと、冷や汗でした。
仙骨麻酔の時には「今度は1回で入れてよ。」と言われました。
「そんなにプレッシャーかけないで」と思いながらも、「はい」と答えました。
自信をなくすと余計入らなくなるのですが、麻酔は1発でした。
前立腺生検はすんなり終了。
「医者は、患者さんに優しいだけではだめ。患者の家族の手を取って一緒に泣くのがいい医者ではない。1に見識、2に技術、そして3番目が人間性だ。優しいだけで、知識も技術もなければ、患者さんには支持されない」、と東大泌尿器科の前教授がまだ講師の頃、私の同期の医者の結婚式で言っておられたスピーチを思い出しました。
この患者さんには、しばらく当院に通って頂くことになりました。やぶ医者という先入観を植え込んでいないとよいのですが。

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