ある時ローマで疫病が流行っていた。
これは大変のコトよ〜〜。
すぐに預言者が呼ばれ、この疫病を迅速に処理できる医者はだれかと信託を仰ぐと、それはギリシアでも名高い名医;アスクレピオスだということだった。
さっそくアスクレピオスはローマに呼ばれた。そしてやってきた。
『ハイ、こちらアスクレピオスです。ご用件をどうご』
「いやーよきてくれました、先生。実は今疫病が……ってあれ?アスクレピオス先生は?」
『ココです、ココ』
「どこ??」
周りを見渡せどそこには蛇が一匹しかいなかった。まさか…。まさかである…。
『今ちょっと手が放せないもので、変わりに使いの蛇をやったのです。なぁに、仕事には支障ありませんからご安心を。で、疫病がなんですって?』
「ほ、ほんとに大丈夫なんですか…?」
にわかに信用し辛いが、アスクレピオスは医者であると同時に蛇使いであったと言われている。本当に蛇を使ってローマの疫病を鎮圧してしまったのだから恐れ入る。以来蛇は医術の象徴としても掲げられているらしい。
さて、ご覧のようにアスクレピオス先生は只者じゃないような行動が可能だが、やはり案の定只者ではない。
彼は太陽と芸術の神;アポロンとテッセイアの王女コロニスの間に生まれ、
射手座の賢者;ケイロンの教育を受けている。否の打ち所の無いエリート英才教育を受けてきたのだ。
アルゴー号冒険(資料館>アルゴー号〜参照)にも医療班として参加した経歴を持つ。
そんな優秀な彼は、神さえもが目を見張る世にも伝説的な奇跡を起こしてしまった…。
アテネの王、テセウスの死んだ息子、ヒッポリュトスを蘇らせてしまったのだ。
アンビリーバブル!リバーァァス!リザレーックション!黄泉帰りィィィ〜〜〜!!
これはギリシア始まって以来、いや、オリュンポス始まって以来の大問題となってしまった。
<第一回 神会議>
「まぁなんだ、生き返ってしまったものは仕方が無いし、別にコレといって…」
「うぎょしょえげあっはんばんぱんぶはああーーーーぁぁぁぁぁぁぁッ!!」(ドンドン!)
「…………どうした?いつもご機嫌に笑っているだけのハデスよ……」
「『意義あり』……と申しているようです」
会議嫌いなゼウスが早々に(適当に)切り上げようとしたら冥界王;ハデスが奇声をあげ、妻のペルセポネが通訳をしてくれた。
「んがぁーっはっはっはっは!こぉんな事が許されて良いと思っとるのかぁ!?死ぃ者ぁがぁ生き返るだなんて生と死のルールに、反する反する反するッ!」
「まぁ、落ち着けやハデス…」
「くぉのぉまぁまぁあの若造が死者を蘇らせ続けたら、やがて地上は人間で溢れ返り高齢化問題は爆発しアルツハイマー痴呆老人が増え国民減少を目的とした子作り禁止令が発布されるぞぉぉぉぉ!それでもいいのかぁぁぁああああ!!」
「う…そ、それはやだなぁ(とくに最後のヤツ)」
「死ぃ者ぁが減って冥界は商売あがったりッ!過疎化が進んで寂れる一方ッ!我は断固訴えるッ!神々の禁忌を破って我に断りも無く死者の復活を成し遂げくさったあの若造をぉぉ、死刑ぃ!(←ポーズ)」
「どっちかって言うとそっちがお前の本音だろう…?」
神会議は難航したが、地上で人間が死ななくなるのは確かに困る。
ところで人間は呼吸停止しても3分か5分程度なら蘇生可能って知ってるか?…まぁ、どういう状況で蘇らせたのかは知らないが(死因にもよるし)。
協議の結果アスクレピオスにゼウスのサンダーボルトが執行となった訳だが…
「ちょ、ちょっと待ってよ、お父さん!アスクレピオスってあの子ね、俺の息子なんだけど!?(それもかなり教育費かけた)」
アポロンが慌てて挙手する。
「あれ?そうだっけ?…………でも、ごっめーん、もう死刑執行しちゃったよぅ♪」
「ああああああっ!!(泣」
アスクレピオスはゼウスの雷で死んでしまった。
ゼウスの雷で息子を失うのはこれで2回目なアポロン(前例;フェアトン)。さすがにキレぎみでゼウスのサンダーボルト開発調整班のキュクロプス達を皆殺しになさったそうだ…。八つ当たりだろうに、それは……。
「まぁなんだ?ほら、星にしてあげるから!元気出せ…?」
ちょっと悪かったなと思ったゼウスはその後アスクレピオスの罪を免除し、蛇使い座として夜空に輝かせたという。
なむー。
(なむ。)
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