そこはかとなくダンダンふざけたタイトルになってきた気もしないでもないですが、ご愛嬌。
さて、この牡羊座の羊は一体全体どこから湧いて出たのか良く分らないのですよね。
というのも出所はハッキリしてるんですが、実際問題そう言う羊がいたのか?
いてなんか違和感を感じないのか?って所に関しては……、
まぁこれまでにもちょっとおかしな動物っていましたから今更って気もするのですが、
いかせん当サイトで動物が主役(なはず)の話ってもしかしなくても書くの初めてだったので、
ここへきてようやく古代ギリシアで如何に変な生き物大量発生していたかに気付いたわけですよ、ワタクシ。
テッサイアの王アタマス氏は1人目の奥さん・ネペレとの間にプリクソスとヘレ兄弟、2人目の奥さん・イノとの間にレアルコスとメリケルテス兄弟がいました。
順番で言えば当然前妃のネペレの最初の息子プリクソスが次の王になるのですが、やはり母親と言う物は自分の子供が一番可愛い。
イノはどうしても自分の息子を王にしてやりたかったのです。
その為ににとんでもない事を企んでしまうところが、古来より女性の底力は男性の5倍って事の由縁です。
イノはある日国中の麦の種を火で炙ってしまいました。
炙ると当然種でなくなっちゃう訳なんでうが、何も知らない農民たちは「は〜やく大きくな〜れ」とのん気に炙られた麦を畑にまきました。芽なんか出やしません。
こうしてこの年のテッサイアは大凶作。
アタマス王は困って神の信託を仰ぐと、「プリクソス王子とヘレ王子を生贄にすれば凶作は治まる」との返答が来ました。
どこをどうすればそれで凶作が治ると言うのか。
しかし王は信託でそう言われてはもう、そうするしかなかったのです。
ところで、信託って誰でも聞けるわけではなくて、やはり神殿に使えている神官が口聞き役をするのですが、この時神官はイノに買収されていたのです。イノの賭けも結構危ない橋渡っています。
悲しんだのは王子たちの母親ネペレ。
そりゃ神が言うなら仕方が無いが、それにしたってあんまりではないか。
大神ゼウスにこのやるせない気持ちを熱心に祈った。
そしていよいよ生贄の儀式本番。
王子2人が祭壇に連れて来られたその時、一同は神殿内で今日は聞く予定のないはずの声を聞いた。
「メッヘヘヘヘ〜」羊の鳴き声。
おいおい誰だよ羊連れてきたの。
今日の生贄は人間の王子なのに(いつもは羊)。
あたりを見渡す一同の前に、カパランカパランと1匹の羊が現れた。そして
「儂は偉大なる牡羊様じゃ。全知全能の神ゼウス様の命でここにおーる(ぺらぺら)」
「ひ・羊が人語を喋っとるーーー!?」
「しかも金色の毛しとるーーー!」
なんとこの羊はネペレの祈りを聞き届けたゼウスがヘルメスに命じて届けさせたバイリンガル羊なのだった。しかも金髪。
こう言う仕事は大抵の場合ヘルメス本人が行う事が多いのだが、今回は何故か羊。
喋る金髪羊に人々が恐れをなしたのを良いことに、牡羊様は、プリクソス&ヘレ兄弟を背中にのっけると、高速で空飛んで逃げたそうだ。
「……今、人語を喋ってしかも金髪でしかも生贄2人とも連れてっちゃった面妖な羊……空、飛んでなかったか?」
ゼウスの羊なら何が出来たって驚く事は無い。あとはこの兄弟を安全な場所まで逃がせば任務完了である。
羊は早い。いや、早すぎる。
あまりに早いんで弟のヘレ王子の方がポロっと落ちた。しかし羊は気付かない。
「と、止まれ!弟が落ちた!」
「メッヘヘヘ〜、もうちっとでコルキスの国に着くかいの〜」
「弟が落ちたんだってば!」
「メッヘヘヘ〜、着いたらうまいもんギョーサン食うかいのぉ〜」
「あああああッ聞いちゃいねぇーーーーー!」
哀れヘレ王子はそのまま海に落ちてヘレスポントス海峡(現在のマルマラ海峡)の由来になりました…
(ちなみに、ヘレは王子じゃなくて王女だったという説もある。まぁポロっと落ちるのは変わらないのでどっちでもいい)
悲しみと安堵を噛み締めてコルキスに着いたプリクソスはその後ゼウスに感謝を込めてこの牡羊様を生贄として捧げ(オイ)
黄金の毛を、眠らないドラゴンを番人に付けて末永く国の宝としたそうな…。
所詮羊は人気生贄生物ナンバー1と言うか、ヘレの仇と言うか、全然めでたくねぇなこの話。。。
黄金の毛は後に因縁を繰り返し、アルゴー号冒険でも登場するが、それはまた別の話。(神々の資料館>「アルゴー号〜」)参照
The
End
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