神々の忘年会が行われた。
ある意味忘年会は新年会や入学式や結婚式なんかよりずっと盛り上がると言ってもいい。
ナイル川のほとりで高位の神々が一堂に会して宴会を繰り広げていたのだ。
このお話は、そんな平和長閑な宴会風景を瞬時に地獄絵に変えた現場を偶然撮影したホームビデオより編集された物である。
尚、山羊座と魚座の発生はほぼ同時期なので今回2つまとめてご紹介します。
宴会は中盤に差し掛かり、神々一同酔いに酔ってハイテンションであった。
「あソレ・パーンちゃんのっ、ちょっとイイトコ見てみたい♪あ・そーれ、イッキ♪イッキ♪」(古)
「おおおお!飲んだらいでかーーー♪(パフー)←角笛。」
「わはははは。つまみが足りんぞ」
あちらでは男性陣が豪快に飲み比べ。
「それでーん、あたし言ったのぉん♪
『アナタはぁ〜、あたしの豊満なないすばでぃとぉ〜、自分の奥さんとどっちが大事なのぉん?』って〜☆」
「アホですか、貴女。アホですよ、その質問!」
「ででで…で、なんて答えたんですかッ!?」
こちらでは女性陣が酒を交えてお喋り。
その時である。
突然大地が揺れ、怪物テュポーン(様)が出現した!
テュポーン(様)とは、いるだけで天空が覆われ地上は影になり、体の端から端までの長さは大陸の長さに匹敵する。
目から熱線、口から火炎。
「フンガーーーーーーーーーーー!!!」
その雄叫びは生きとし生けるもの全てを恐怖のどん底に陥れると言う。オリュンポスの神々は……
「……………………………………………………。」
絶句し、
「逃げろ。とにかく逃げろ。」
真っ先に鳥に変身した大神ゼウスを合図に、一同空路・陸路・海路に分かれて尻尾巻いて逃げる事となった。
その記録映像がここに。
<カメラ1>
「ヤッベーーー!角笛なんか吹いてる場合じゃねぇ!マジ、ヤッベーー!」
イッキ飲みしていた牧畜の神・パーンは酔いも冷め冷め、
とっさに変身して逃げようとしましたが、このときパーンの頭の中では2つのチョイスがありました。
1:山羊に変身して陸路を猛ダッシュで逃げる。
2:魚に変身してナイル川から海へ逃げる。
良くある事だ。二兎を追う者はなんとやら。
考えてはいたものの、体は反射的に川に飛び込んでいた。
激しく迷っていた脳で変身の術を使ったパーンの体は、大変な事になっていた。
「ブあーーーッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!」
「ヤドロク、あんたそれ、笑いすぎ。」
空路で逃げ途中のゼウスはその姿を見て大笑いした。
パーンは上半身山羊・下半身魚の、限りなく面妖な姿となっていたのだ。
やがてテュポーン(様)騒ぎから時が経った。
あの時は皆必死だったが、過ぎてみればあの時見たパーンの姿は半年は思い出し笑いができる程の傑作であった。
それを記念してゼウスがあの時のパーンの姿を星に変えたのが、他ならぬ山羊座の正体なのであった。
教訓:「喉元過ぎれば熱さを忘れる。」
<カメラ2>
「きゃーん☆魚になって逃げるのよん、エロスちゃん☆(どろん)」
「ラジャ!母さん!(どろん)」
パニックの中、海路を取った美の神アプロディテとその息子愛の神エロス親子。
でも、ナイル川を泳いでいく途中にもしはぐれたら大変!とアプロディテはとっさに気付いたのだ。
意外と母親らしいところもある。
しかしそう言う事は、変身する前に気付くべきであろう。
「ああぁぁ〜ん!誰かぁぁん!あたしとエロスちゃんの尻尾を紐で結んで結んでぇん☆(ぴちぴち)」
「水ーー!エラ呼吸エラ呼吸!死ぬ!死ぬ!(ぴちぴち)」
なにやら地面で跳ねている魚に偶然気付いてくれた逃げ途中の神に尻尾の先を紐で結んでもらい、親子は川に飛び込んで逃げた。
これが、魚座である。ちなみにこの親子がテュポーン(様)に出くわしたのは、宴会時でなく探検時だという説もある。
教訓:「大切なのは『用意周到』。」
The
End
|