母は大熊座

北斗七星の一部を含む大熊座は世界で3番目に大きな星座と言われています。

 

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月の女神アルテミスが、処女神アテナに憧れの念を抱いている事は有名です。…え、ご存じない?(資料館〜、嵐を呼ぶ〜参照)
そんなアルテミスのお付のニンフ達(侍女したいなもん)もまた、アルテミスと同様に処女しかいないのです。
純潔の女神の取り巻きはやはり純潔でないといけないのです。
アルテミス付きのニンフの中に
カリストと言うニンフがいました。
彼女はなかなか個性的な美人さんで、その美しさが大神
ゼウスに目を付けられてしまったのです。
世の中「美人は得をする」と良く言われますが、ゼウスがそこにいる限り美人は損ばかりするような気がします。
処女の誓いを立てているカリストに近づく為、ゼウスはアルテミスに変身。
なんと悪どい。アルテミス姿のゼウスは油断しきっているカリストに近づき頬擦りをし……
(カァーット!)
……さて、女同士で神秘的な何かがあり、カリストはゼウスの子を身篭ってしまった。
恐くて妊娠した事をアルテミス本人に言い出せないままのカリスト。
しかし彼女のお腹はどんどん大きくなっていく。
いつまでも隠しとおせる事ではなりません(基本的に「堕胎」と言う選択肢は存在しないらしい)。
アルテミスだって気付いてしまいます。
「カリスト、気のせいかしら。あなた、最近お腹だけ随分太ったんじゃない?」
「ドキ!?そ、そうですね、アルテミス様。ちょっと食べすぎかしら〜?」
「気のせいかしら。あなた最近妙に酸っぱい物ばっかり食べていない?」
「ま、まぁ!そんな、もともと甘党ではないもので〜」
「気のせいかしら。あなた最近…」
「ウッ!?」
アルテミスに問答されていたカリストが突然苦しそうにうずくまりました。気分が悪そうです。
「か・カリスト!あなた、それは日本語で言う『つわり』と言うものだわよ!あなたやっぱり…」

つわり【悪阻・ツハリ】
妊婦が妊娠2〜4ヶ月頃に悪心・吐き気・食欲不振を起こす状態。
多く、酸味を好む傾向がある。  
―岩波書店広辞苑より

アルテミスは多大なショックを受けていた。
「つわりぃぃぃーーーーーーーーーー!!」
「あ・アルテミス様!実はこれには訳が…」
「お黙りなさい!アアッ!私のニンフが妊娠だなんて!嗚呼っ!『純潔』たる私のイメ〜ジがッ!(クラっ)」
「アルテミス様!聞いてください!」
「カリストのバカぁーーー!あんたなんて、クビよ〜〜〜〜!」(泣きダッシュ)
女神アルテミスに追放を言い渡されカリストは一人孤独にゼウスの子を産みました。
男の子で、名を
アルカスと付けました。
しかし不幸はこれで終わらなかった。
「ホホホホ…、お前かえ?ニンフの分際でウチのヤドロクの子を産んだのは〜。フン、尻の軽い下賎な女め。熊にでもなっておしまい!」
ゼウスの正妻である嫉妬の女神
ヘラはカリストを熊に変えてしまいました。(アルテミスがやったって説もありますが。)
不幸なカリストは、こんな姿では自分の子を育てる事も出来ません。
悲しみに暮れながら、カリストはその後10年以上も森で熊として生きていく事になったのです。

ある日熊カリストが森を歩いていると、一人の狩人が森にやってきました。
カリストは直感で分かりました。
その青年はカリストの成長した息子・アルカスだったのです。
喜びのあまり、カリストはアルカスを抱きしめようと突進していくます。
しかしアルカス的ビジョンから見れば、熊が襲ってくるとしか見えません。
アルカスは弓を構え、熊の心臓を狙います。その時です。
アルカスは突然小熊の姿に変身してしまいました。そして近寄ってくる熊が、自分の母親だと分かったのでした。
ところで、一部始終を木陰の隅から見ていた人物がいました。
「…くぅ。熊にされた母親に気付かず、母を殺してしまう息子…。泣ける話やな〜。でも可哀想だから今回はサービス」
ゼウスだ!事の発端であり、諸悪の根源ゼウスがアルカスを小熊に変えたのだった!どうしてその逆にしないんだ?
ゼウスはその後、カリストとアルカス親子を夜空に輝く星に変えました。
熊の姿になった親子は、永遠に仲良く
大熊座小熊座として輝く続けるのであった。

ところで、牛飼い座と言うのが、小熊になる前のアルカスとも言われています。2回も星にされる人は非常に珍しいです。

The End