オリオンと月の女神

星座の中ではとてもとても見つけやすいオリオン座
この神話は他に例を見ない程の違う2つの説があります
ここでは月の女神サイドの神話をご紹介します。

 

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ボイアディアと言うド田舎に巨人族の狩人オリオンが住んでいた。
彼はある日
キオス島に狩に行き、そこの王女に恋をした。
彼女との結婚を認めてもらおうと、父王に頼み込んだが、
キオス王はこーんな田舎モンの狩人なんぞに大事な娘をやりたくなかった。
王は裏山の野獣を退治したら考えてやる、と言いってやった。
本当は相打ちを狙ったのだろうが、なんとオリオンは見事その野獣を討ち取ってしまった。
ヤベェなどうしよう、と考えた王は、オリオンに睡眠薬入りの酒を進め、オリオンが眠っている間に彼の両目をえぐり取った。
ハナから娘をやる気はサラサラ無かったのである。

盲目になってしまったオリオンに同情したのが
オリュンポス12神の一人、鍛冶の神ヘパイストス
「気の毒になぁ。ま、女運が悪いのは俺も同じだから同情するよ。
俺の知り合いにその目をなんとかできそうな奴がいる。地図と手紙やるから、行って治してもらえ」
ヘパイストスはそう言って、太陽神
アポロンの住んでいる場所への地図と、アポロンへの手紙をオリオンに持たせた。
巨人だから歩幅も広い。歩くのはやい。山飛び、海飛び、アポロンの元へやってきた。
「あー?オリオン?あぁ、聞いてる聞いてる。
めんどくさいけど、ヘパ様(注:ヘパイストスの事)の言いつけだから、しょーがねーナ治してあげるよ」
アポロンの力で目を治してもらったオリオン。
でもしばらく盲目だったから、帰る前にしばらくココでリハビリして行くことになった。

「こいつがしばらくお前の世話をすることになる俺の妹の
アルテミスだ」
「やっほー。アルテミスでーす。ま、しばらくヨロシクねー」
もともと狩人だったオリオンと、狩を司る月の女神アルテミスは気があった。
「オリオンさんって色々知ってるのねー、もっと面白いこと教えて〜♪」
巨人族が珍しいらしく、アルテミスは随分とオリオンに懐いていた。
オリオンも自分の世話をしてくれるアルテミスが実の妹のように可愛かった。
…柱の影で、アポロンはちょっと面白くない。
「クソぅ、あの巨人め。俺の可愛い妹と1日中楽しそうに……」
シスコンと言うのは誤解だと
「私有地」に書いたが……どうも訂正の必要がありそうだな。
ちょっとヤキモチっちなアポロンはある日妹を狩に誘った。
「おーい、アルちゃ〜ん♪明日、兄ちゃんと狩にでも行かないか〜い?小さい頃は良く二人で行っ…」
「あ、ごっめーんお兄様。明日はオリオンさんと魚釣りなの。じゃーね♪」
アポロン、ショォォーーーーーーック。
「俺が呼べば…いつも笑顔のアルテミスが……」
憎い。あの巨人が憎い。よくも俺の可愛い妹を。
アポロンは嫉妬の炎をオリオンに向けた。…しかしよく嫉妬するなぁ、この男。

オリオンが一緒に暮らすようになって随分経った。
彼もすっかり元気になり、一人歩きもするようになった。
オリオンが一人で出かけたのを見計らってアポロンはまたアルテミスを狩に誘った。
今度はアルテミスも誘いに応じて、狩を司る双子神は一緒に近場の海に「カモメ落とし」に出かけたのだった。(※カモメ落とし:そら飛ぶカモメを片っ端から撃ち落す世にも残酷なゲーム)
その時、海の彼方になにやら黒い点が見えた。
遠くて確認できないが、木の切れ端かなにかだろうか? すると、アポロンは言いました。
「アルテミス、いくらお前が狩の女神でも、あの小さな的に矢を当てる事はできないだろ?」
「あら、お兄様ったら。バカにしないで。もちろん当てられるわよ!」
アルテミスは弓を構える。
「ムーン・プリン●ス・ハレェェェェイ●ョーーーン!」気合と共に弦を鳴らしたアルテミスの矢は
見事に海に浮かぶ木の切れ端だかゴミ袋だかなんだか知らん何かに命中した。
得意げになるアルテミスには分からないように、アポロンは含み笑いを浮かべた。

次の日、アルテミスは海辺をトボトボと元気なく歩いていた。
オリオンが昨日から帰ってこないのだ。
一体どうしたのだろう。まさか迷子に?そんなバカな。
ふと前方を見遣ると、なんとそこにはオリオンが倒れていた。
びっくりしてアルテミスが駆け寄ると、オリオンの頭は一本の矢に射抜かれていた。
「ま、まさかこの矢は…。私!?私がオリオンさんを射ったの!?イヤアアアアア〜〜〜(泣)」
なんと、あの黒い点は、泳いでいるオリオンだったのだ。気づかなかったなぁ。
「アル…テミス」
「お、オリオンさん!?良かった!生きていたのね!?ゴメンね、私…すぐに救急車を…」
「ムリダ。タスカラナイ…」
「そんな…」
「アルテミス…、アリガトウ。ゲンキデ…」
「オリオンさぁぁぁん!」
オリオンの大きな手がアルテミスの髪を撫でる。そして巨人は息を引き取った。
「ゴメンネ、オリオンさん…。私、あなたに何もしてあげられない。
せめて、あなたの事は絶対に忘れないように、あのお空のお星様に変えてあげるわ……」
こうして女神アルテミスによって、オリオンは冬の夜空に輝く巨大な
オリオン座となったのであった。

オリオンの死に方は以上のアルテミスの矢にかかって死ぬタイプと、
アポロンが
サソリに命じてオリオンを殺すタイプの2つがある。
全然違う上、どこでそう別れたのか検討も付かないが、いずれにせよ、どちらの場合もアポロンの嫉妬によって死亡したことは間違いない。
また、後者のサソリ説の場合、このサソリは
蠍座になり、蠍座が出ている間はオリオン座は見えないと言われている。

 

The End