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          かつて、天空の神として神々の頂点に君臨したウラノス(空)は、 
         
         息子のクノロスによってその座を追われた。今頃は煙突掃除屋でもしていることだろう。 
         
         我々取材班は、そんな彼にインタビュウすることに成功した。ウラノスさん、息子さんに一言… 
         
         「このままで済むと思うな!?お前もいつか俺みたいに自分の子どもに出し抜かれる日がくるぜ!」 
         
         それは予言ですか? 
         
         「そしたらお前なんか便所掃除屋だぁぁ!うわーっははは!…じゃ、仕事に戻る」 
         
         あっ待ってください、もう少し……以上、ウラノスさんでした〜* 
         
          
         
         さて、ウラノスに代わって王者となったクロノスだが、やっぱり親父は親父。 
         
         あんな予言をされると気持ち悪いのであった。 
         
         一方クロノスと結婚したレアは、 
         
         「あなた、生まれたわ!私たちの最初の子!ホラ見て可愛い女のk…」 
         
         「よこせっ(ペロっ ごックン…(飲))」 
         
         「きゃああああああ〜!?」 
         
         ウラノスの予言を恐れた夫に、生まれた子どもを端から丸呑みにされそれはそれは悲しんでいた。 
         
         産んでも産んでもペロごっくん。もう既に3人の娘と2人の息子が食われてしまった。 
         
         虚しい、悔しい、やるせない…。 
         
         6度目の出産で男の子を産んだレアは、その子をゼウスと名付けこっそりクレタ島のニンフに預けた。 
         
         クロノスを誤魔化す為に、その辺に落ちていたハニワに適当に産着を着せ、 
         
         「ホイ、今度生まれたあんたの子よ」と差し出した。 
         
         クロノスは疑いもせずハニワを飲み込み、それから数十年が経過した…。 
         
          
         
         成長したゼウスは母・レアと共に飲み込まれた兄弟達を助けようと計画を練り始めた。 
         
         またしても世代交代の予兆は、「子を想う母とその息子」からはじまるのであった。 
         
         既に飲み込まれて十数年、いい加減消化されてそうだが神話だからイッツ・オッケーである。 
         
         ゼウスはクロノスにこっそり吐き薬を飲ませ、次々に兄弟達を吐き出させた。 
         
         この時、飲み込まれた順とは逆に吐き出されたものだから、本来末っ子だったゼウスが長兄になり、 
         
         本来長子だったヘスティアが末っ子になった(諸説あるようですが)。どうでもいいが身代わりハニワも吐き出された。 
         
         紹介しよう。 
         
         ゼウス、ポセイドン、ハデス、ヘラ、デメテル、ヘスティアの6人兄弟である。 
         
          
         
         ついにゼウス兄弟と、クロノスを筆頭とするティタン族との戦争は避けられなくなった。 
         
         かつてウラノスが残した予言が実現しようとしているのだ。これも宿命…双方は着々と戦争の準備を始めるのであった。 
         
         しかしパっと見、明らかにゼウス達の不利(6人しかいないし)。 
         
         そこでゼウスは祖母であるガイア(大地)に知恵を求めた。 
         
         するとガイアは、かつてウラノスによって地中深くに閉じ込められた 
         
         キュクロプス族とヘカトンケイル族を助け出し、味方に付けろとの助言をくれた。 
         
         昔クロノスにも同じ事を依頼したものの、ほったらかしにされていた。 
         
         ガイアはずっと彼らのことを案じていたのだ。母心である。 
         
         生まれて間もなく「醜いから」と地中深いタルタロスに閉じ込められていたキュクロプスとヘカトンケイルは、 
         
         ようやくゼウスによって日の目を見ることが出来た。 
         
         対クロノス戦争でゼウス達に協力することを約束したキュクロプスは、ゼウス達に強力な武器を作ってくれた。 
         
         ゼウスに「雷の錫」、ポセイドンに「三又の矛」、ハデスに「隠れ帽子」。 
         
         3人は作戦を立てた。 
         
         「よし、まずポセイドンが親父の注意を引く。そうだな…阿波踊りでもしてみろ! 
         
         そしてハデスが『隠れ帽子』で姿を消して親父の武器を奪うんだ! 
         
         親父がオロオロした所で、ボクが必殺☆サンダーボルトを打ち込むよ!」←まだ若いので口調が清純なゼウス 
         
         「なんかゼウスだけ安全且つおいしいトコ取りしてないか?」←まだ若いので口調が丁寧なポセイドン 
         
         「ククククク…飲み込まれさえしてなければ今頃我が一番偉かったものを…」←まだ若いので笑い方が上品なハデス 
         
          
         
         一方、ヘカトンケイルはクロノス以外のティタン族の相手を引き受けた。 
         
         お忘れかもしれないが、彼らは50の顔と100の腕を持っている。 
         
         ヘラ、デメテル、ヘスティア達がせっせと石を集め、それをヘカトンケイスがソレソレと敵陣に向かって投げるのである。 
         
         100の腕があれば、投石はほぼ止まることが無い。 
         
         「撃てーーー!」 
         
         「えい!えい!えい!えい!えい!えい!えい!えい!えい!えい!えい!えい!」 
         
         これは痛い。 
         
         戦争は長きに渡った。しかしついにゼウス達はクロノスをやっつけ、溜まりかねたティタン族は降参したのだった。 
         
         余談だが、ティタン族の中でもプロメテウスだけはこの時中立の立場を取り、戦争には参加しなかった。 
         
          
         
         クロノスの権威もこれまでである。 
         
         ティタン族の多くは、かつてウラノスがキュクロプス・ヘカトンケイルを閉じ込めたタルタロスに幽閉され、 
         
         その見張り役にヘカトンケイルが任命された。 
         
         ところでゼウス達に敵対するティタン族の中でも、取り分け強い奴がいた。 
         
         彼の名はアトラス。こいつがいたせいでゼウス達がとーっても苦戦させられ、 
         
         腹いせにこのアトラスにだけは、天空を支えるという重い罰を与えたという。 
         
         ゼウス達男兄弟3人は、世界の支配領土を取り決めた。 
         
         ゼウスは地上を、ポセイドンは海を、ハデスが冥界タルタロスの王となった。 
         
         これが、最も古きオリュンポス誕生の神話である。 
         
         ……クロノスがタルタロスで便所掃除屋になったかどうかは知らない。
          
         
         終
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