始まりの夜明け
超太古神話1

 
 遥かなる神話の時代。そのまた昔。
オリュンポスの神々が生まれるよりも更に昔。
この世界には何もなかった。
この「何も無さ加減」を「カオス(混沌)」と呼ぶのだが、いつの頃からかガイア(大地)が現れた。
その内カオスから(あるいはガイアから)、今度はウラノス(天空)ポントス(海)が生まれた。
もうしばらくすると、ニュクス(夜)エレボス(闇)などなどのオプションが生まれた。
…「生まれた」というより、「発生した」に近い気がするが。
どうもこう…いまいち「形の不確か」なモノたちが次々と生まれたのである。

その内、母なるガイアがウラノスと交わって「形の確か」なモノが生まれはじめる。
ガイアはたくさんの子ども達を産んだ。
後にティタン族と呼ばれることになる正常な人型をした巨人族たち、
一つ目の巨人・キュクロプス族たち、
そして手ぇ100本・頭が50個(個…?)のヘカトンケイル族たち。
ティタン族の中には後にオリュンポスの最高神ゼウスの妻にもなるムネモシュネテミス
トロイア戦争の英雄アキレスの母;テティスなどもいる。

ところが、父親のウラノスは見た目の綺麗じゃないキュクロプスやヘカトンケイル達を嫌った。
「ナニコレ。かっわいくねぇ〜。これがオレっちの子?冗談じゃねぇ。週刊誌にバレたら吊るし上げられてスキャンダルだぜ」
空の分際贅沢な。
ウラノスは醜いキュクロプスやヘカトンケイスを地中深くに閉じ込めてしまった。
母であるガイアはこれに大変ご立腹。
どんなに醜くても我が子である。これだから産みの苦しみを知らない男親はっ!(怒)
怒ったガイアはティタン族の末っ子・クロノスに横暴親父をなんとかするよう言いつけ、一計を案ずる。

そうとは知らずに、ウラノス(空)はニュクス(夜)を連れて(?)今日もガイア(地面)と愛、育む為にぬけぬけとやってきた。
「ウハハハ!今日も夜這い明日も夜這い毎日夜這い〜!」
「……ぶつぶつ」
「オウ、ニュクス。シケたツラしてんじゃねーよ。神が生まれる神話的瞬間に毎回立ち会う我が身を喜ぶがいい!」
「あーイヤらしい汚らわしい…。なんでわたしが毎回身内主演のAV現場に付き合わなきゃならないのよ(嘆)」
「お前がいなきゃ『夜這い』にならないじゃないか」
嫌がるニュクスを伴いながら、本日もウラノスがガイアとの交わりを始めようとしたとき、物陰に隠れていたクロノスが飛びだした。
「やいやい、生産第一主義のクソ親父(空)め!お母さんを悲しませた罰だ!お前なんかこうだ〜〜」
「あああっ なんてコトを〜!」
クロノスは、母ガイアに持たされたで、父の<男の急所>を切り落としてしまった(空だけど)。
…エゲツねぇことするなぁ?しかしこの行動にはとても重要な意味があるのだ。
人口の絶対数の少ない神話の世界では、新しい命を生産できる力というのはとても尊く、とても権力のあることを象徴する。
よって<男の急所>を失い、去勢されてしまったウラノスは、一夜にして支配権を失う事を意味するのだ。
そう考えると、あまりいやらしくもないだろう(?)。

クロノスは切り取ったウラノスの<男の急所>を海にポシャンと捨てた。
まぁ、その辺に飾っておく訳にもいかないし。
そのとき、大地に染みた血から復讐の女神エリニュスと、
海の泡のなかでちょっとした受精卵ができてしまいそこから美の女神アプロディテが生まれたという。
こうして父に代わってクロノスは宇宙を支配する神となり、姉のレアと結婚した。
この夫婦が後にゼウス達の両親になるのだが、それはもう少し後に回そう。
ガイアはクロノスに、地底に閉じ込められたままの兄弟達;キュクロプスとヘカトンケイスたちを救出するように言ったが、
王者に上り詰めたクロノスはウハウハ気分で、母のいう事に耳を貸さなかった…。
ああっ、もう!男の子は大きくなるとおかーさんの言う事ちっとも聞かないんだからッ!(怒)

「でも…これでもうわたしは夜這いに付き合わされることはないのね?嗚呼…解放だわ〜。自由ってステキ〜*」
とりあえずニュクスは幸せそうな顔で帰っていった。
こうして夜が明けてゆく。神話はまだまだ始まったばかりである。

続く