「っつーかぁ〜、マジ恋することはツラいことっスよ〜。胸が詰まってお食事も喉を通らないッスよ〜」(←またそれか)
「うんうん、そうよねん♪」
「さすがアプロディテ様は話が分るッスよ〜」
「それでん〜?今日はあたしの恋の相談事務所『チョ→恋してる』に何のご用なのん?」
「ご用なんて決まってるじゃないッスか〜。ぶっちゃけチョ→辛い恋してるんで、なんとかして欲しいンスよ〜」
このギャルとギャル男の会話のような出だしは、ある日の美の女神アプロディテと青年ヒッポメネスのやりとりである。
平凡な男・ヒッポメネスは街一番の美人・アタランテに恋焦がれていた。
しかし彼女は美しいばかりではなく、恐ろしく足が速かったのである。
彼女は次期オリンピックの金メダリスト最有力候補!
世界の壁! 世界のアタランテ! …そういう期待の掛かった女性なのである。
駆け足の速さを自慢にしていたアタランテもハッキリと言っている。
「私と結婚したい男は私と競争して勝つことね!挑戦してきて負けるような軟弱者は3階回ってワンさせてやるわ!」
「いやぁん☆ガードの固い女の子なのねん?」
「俺みたいなちょっとだけイケてるだけの普通の男じゃ全然振り向いてくれないっすよ〜」
「アハン☆分ったわん♪あなたはいつもどうでもいい恋の悩みをうちの事務所に持ってきてくれて相談料いっぱい払ってくれるお得意様だから特別にあたしが手をかしてあげるわん〜♪」
美の女神アプロディテにある作戦を伝授してもらい、黄金の林檎を3つ貰ったピッポメネス。
黄金の林檎は過去何度も登場する。(神々に資料館>「パリスの〜」、「神と人の英雄[後編]」参照)本来はゼウスの所有物であるが…
ゼウスに貰ったわけではないが、アプロディテも下手に持っててヘラにいらん恨み買うのもゴメンだと思ったのだろう…。
翌日、ヒッポメネスはアタランテに徒競走1本勝負を申し込む。
ここ数年彼女に挑戦する無謀な男はいかなった。沢山の観客と、ジャッジたちが見守る中レースははじまった。
スタート直後、ヒッポメネスは黄金の林檎を一つ、これ見よがしにコースとは関係無い方向に投げた!
黄金でできた美しい美しい林檎。アタランテはつい欲しくなり、拾いに行ってしまった。
その間にヒッポメネスは必死に走る。
しかし世界のアタランテ、ちょっと先行を許したぐらいではやられない。すぐに追い上げてきたが、するとヒッポメネスが再び黄金の林檎を投げる!アタランテ、拾いに行く。
そうやって最後の林檎をアタランテが拾ったとき、ヒッポメネスは彼女より先にゴールしてしまっていた!
なんてことだ!世界のアタランテ、破れる!連勝記録もここでストップである。
このレースの公平性についてジャッジたちが議論している。しかし…
「いいの、私の負けよ。私、この人と結婚するわ」
「しかし、アタランテ!いいのか?どう見ても卑怯だと思うぞ?」
「いいのよ。私も(金目のモノをホイホイくれる)この人のこと気に入っちゃったわ。よく見ればいい男(男は金よね)じゃない。
私、(この金があれば)幸せになれるわ(玉の輿〜)」
アタランテがそういうのならばしかたがない。
こうしてヒッポメネスとアタランテは結ばれた。
女性と林檎は、何か因果な関係にあるらしい。
めでたしめでたし。…か?本当に?
おわり。
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