アルゴー号冒険[序編]

遥かなる神話の時代、イオルコスの国に次期国王候補のアイソンペリアスと言う王子がいた。
本来ならば兄のアイソンがすんなり王になるのが筋だが、ペリアスはアイソンを出し抜いて王の座についてしまった。
……初っ端から分かりやすく醜い権力闘争で始まる物語である。
さて、弟に幽閉されそうだったアイソンは、自分の家族の身を案じて、幼い息子;イアソンをケンタウロス族の賢者;ケイロンに預けた。
ケイロンと言えば英雄や賢人を多く輩出する、教育者としてはプロ中のプロ。(星たちの森>「射手座の賢者」参照)
そんなケイロン宅で武術・学問を教え込まれたイアソンは、やがてケイロンから実は自分こそがイオルコスの国の正当な王位継承権を持っていることを知る。
成人したイアソンは、叔父に王位を返してもらうべく一路故郷;イオルコスへと赴いた。
ギリシア神話ではいつもそうだが、持って生まれたエリートの血と言うのは何が何でも有効利用しなくてはいけないという法則がある。
このまま静かに羊飼いでもしてゆっくり暮らそう…等という案はハナっから却下なのである。

さて、イアソンがイオルコスへ向かう旅の途中を一本の川が遮っていた。
なーにこんな川くらい。なんか浅そうだし、普通に川底歩いちゃえ〜。
イアソンがそのまま川を渡ろうとすると、一人の老婆が声をかけてきた。
「お若いの、あんたもしやこの川を渡るのかえ?」
「うん、そうだけど?」
「あ"〜若いってのはいいねぇ〜。あたしもねぇ〜、この先のイオルコスに火急の用があってね〜、でもこのありさまだしねぇ〜」
「そだねー。おばーさんにはココを渡るのはちょっと無理だね」
「そうなんだよお若いの。あ"〜しかしあたしも急いでてね〜、あ"〜最近は腰も痛くてねぇ〜」
「橋でも探した方がいいと思うよ?じゃ、僕はこれで…」
 ―フミッ!! ビターーンっ
「あ"〜、最近腰の痛みが激しくてねぇ〜。冷やすとひどくなる一方だしねぇ〜。こんな所に川があって進路妨害だしねぇ〜、あたしもねぇ〜急いでてねぇ〜」
「…………。」
川を渡ろうとしたイアソンのマントの裾を老婆は踏んづけて離してくれない。
「おばーさん、もしかして僕に川渡しをしろと…?」
「なんと、お若いの!川渡しをしてくれるのかいっ!あらまぁ、頼んでもいないのにあんた親切だねぇ〜感服だねぇ〜」
「…………。」
イアソンは見知らぬ老婆をおんぶして川を渡り、その後も腰痛を訴えながら遠回しに道連れを強要する老婆を、結局イオルコスまで延々と背負って来てしまった。
「あんたイイやつだねぇお若いの。あたしんトコのヤドロクなんてねぇ〜、年がら年中若い娘の尻ばっかり追っかけててねぇ〜」
「はいはい。もう着きましたからはやく降りてくれる?」
やっとの事で老婆から解放されたイアソンは、さっそく王宮の叔父;ペリアスの元へ行き王位の返還を求めた。
イアソンが生きているとは思わなかったペリアスはびっくり仰天。
当然、邪魔者この上なく感じるのだが、ギリシアでは身内を直接的に故意に殺害する事は許されない。
とりあえず歓迎するフリをしながら、そこはかとなくイアソンの勇猛果敢な性格をつついてみせた。
コルキスの国に、眠らない竜が守っている空飛ぶ黄金の羊の毛(星たちの森>「儂は偉大なる〜」残照)
。これを手に入れる事が出来たら、快く王位を譲ろうと持ちかけたのだ。
何の勝算も無いくせに、こう言う時神話の主人公は深い考え無しにOKしてしまう。
かくて、イアソンはペリアスから難題を受けたのだった。

「おぉ、お若いの。聞いたよ、あんた大変な事になってるそうだねぇ〜」
「あ、おばあさん。まぁ、大変なのは確かだけど…もう用事済んだの?」←あまり関わりたくない
「ふっふっふ、そう邪険にしなさんな。あんたが困ってるみたいだから力を貸しに来たんだよ。コルキスへ行く船は用意できそうなのかい?」
「一応、ギリシア一番の大工のアルゴスさんに頼むつもりだけど……てなんでおばーさんそんな事知ってるの?」
「なるほどね。それで?乗組員は揃ってるのかい?」
「いや、まだ一人も…。でもおばーさんなんでそんな事…」
「ヨシキタ。ならばわらわが手頃なのを雁首揃えて呼び寄せてくれるわ!」
突然、老婆はイアソンの前でモクモクとスモークを上げて変身した!そして、気が付くと、イアソンの手にはこんな手紙がざっと50通握られていた。

来なさい。
さもなきゃ呪う。

byヘラ

「お・おばあさんは、あの(嫉妬で有名な)オリュンポス12神の1人;女神ヘラ様だったんデスカッ!?(敬語)」
「フッ。わらわは献身的な男は好きぞえ?その手紙をさっさとポストに入れて来いや」
元の姿のヘラは偉そうに指図する。
そんな訳でヘラのコネ(半ば脅迫)によって、ギリシアでも並々ならぬ実力者達がイオルコスのイアソンの元に集結した。
戦力面の代表、12偉功の英雄;ヘラクレス(神々の資料館>「神と人の〜」参照)、双子座のカストルポリュックス兄弟(「星たちの森」>「比翼の双子座」参照)
医療班・知能班の代表、名医;アスクレピオス、後にトロイア戦争の英雄となるアキレウスの父ペレウス
預言者として太陽の神アポロンの息子;イドモン、何故か琴座のオルフェウス(星たちの森>「琴座の〜」参照)etc 
使えそうなヤツ、使えなさそうなヤツ合わせて50人前後。
そして大工のアルゴスに頼んだ船も、知恵の女神;アテナの祝福を受けて(アテナさんは「勇敢な行為」をする者には無条件で味方する)完成。
ここに、アルゴー号冒険チームの結成である(半ば強制)。
「いってきまーす!いってきまーーーす!」
「時給は出るんだろうな?この旅」
「サァ皆さん!船出を祝して歌いましょう!さん・ハイぃ〜!」
 ポーン・ポロロン・ポーン、ポーン……
「『威風堂々』…」
「何故『威風堂々』……?」
話のネタ以外の何者でも無さそうなこのオールスターズ、果たして無事黄金の羊の毛を手に入れられるのだろうか?

 

次回に続く。