ラビリンス・オブ・クレタ2

以下の物語は、ラビリンス・オブ・クレタ[本編]をお読み頂いてからご覧になった方が、より楽しんでいただけると思います。

 アテネから怪物ミノタウロスを倒す為にテセウスがやってきて、
見事ミノタウロスを討ち取って、しかもクレタ島の王女アリアドネまで連れて行ってしまい、
クレタ島では嵐が去ったかのような茫然自失状態でした。

当然ながら、怒るのはミノス王
アリアドネに、ラビリンスを脱出する為の銀の糸玉を渡した名工・ダイダロスと、その息子イカロスを牢にブチ込みました。
そんな事しても何もならないのに…しかしまぁ、もう、他に八つ当たりする相手いませんからねぇ〜。

ダイダロスは自分の閉じ込められた地下牢をグルっと見て回りました。
深い竪穴の底。遥か高い天井から漏れる日の光。
時折落ちてくる鳥の羽根。
縦穴の底にいる自分たちには、もうこの先一生、蝋燭の明りしか与えられないのでしょう…。
「わしはぁ〜、あんな恐ろしい化け物を閉じ込める迷宮を設計なんてしてしもぉたときからぁ〜、いつかこうなる運命じゃよ思っとったカイのぉ〜…」
「どうするのさ、お父ちゃん。諦めてココで死ぬの?」
「んにゃ〜、わしだけならそうしとってケドのぉ〜、息子のお前まで道連れは気が引けるサのぉ〜」
「当たり前だよ」
「ヨシ、お父ちゃんがなんとかしてみるカイのぉ〜」
腐っても名工・ダイダロス。その手先の器用さでは右に出るものはいません。
ダイダロスは天窓から落ちてくる鳥の羽根を蝋燭の蝋で固め、人間の腕サイズの大きな翼を2対作り上げたのです。
そりゃもう、コツコツコツコツと。
その翼を装備して、ダイダロスとイカロスは地下牢の天窓から、なんと飛んで逃げ出したのです。バッサバッサとね。
「わー、スゲーやお父ちゃん!空、飛んでるよ!」
「あんまりはしゃぐの良く無いのぉ〜。高く飛びすぎちゃイカんのぉ〜」
「平気だって!僕、もうちょっと高く飛んでみたい〜!」
興奮しまくりのイカロス。そらそうだろう。
丘はぐんぐん遠ざかり、下に広がるは青い海。雲より高く、それは飛行機が発明される何世紀も前
空からの景色を見た若者の感動ですねぇ。
しかしイカロスは夢中になりすぎて、自分の高度が相当上がっていた事に気づきませんでした。
太陽の熱でみるみる蝋は溶け、翼は翼としての役目を果たさなくなりました。
イカロスはそのまま落ちて死んでしまいましたとさ…。

一人無事地上に降り立ったダイダロスはその後ミノス王の追ってから逃れ、
名工としての腕を認められ、どこか遠い国でまた大工としてやり直したのでした。

ちなみに、イカロスの落ちて死んだ海はイカリオス海と呼ばれるようになりました。
また、日本では越部信さん作曲、片岡輝さん作詞でイカロスの歌があります。
小学校などで結構馴染みのある歌かと思いますのでご紹介します。

 

<勇気一つをともにして>

昔ギリシャのイカロスは 蝋で固めた鳥の羽根
両手で持って飛び立った 雲より高くまだ遠く
勇気一つをともにして

 

丘はぐんぐん遠ざかり 下に広がる青い海
両手の羽根をはばたかせ 太陽めざし飛んでいく
勇気一つを友にして

 

赤く燃えたつ太陽に 蝋で固めた鳥の羽根
みるみる溶けて舞い散った 翼うばわれイカロスは
落ちて命を 失った

 

だけどぼくらはイカロスの 鉄の勇気を受け継いで
明日へ向かい飛び立った 僕らは強く生きていく
勇気一つを友にして

 

小学校の歌集とか探せばあるんじゃないかと…
ラビリンス・オブ・クレタ[イカロス編]
The End