パリスの審判

世界最古の美女コンテスト。これは接戦だった。恐ろしかった。
なんせ、このイベントのせいでトロイア戦争なる戦いが始まってしまったのだから。

事の始まりはやはりゼウスだった。
オリュンポスで行われるテティスペレウスの結婚式に、「不和」と「争い」を司る女神エリスだけ招待しなかったのだ。
当たり前と言えば当たり前である。
めでたい結婚式に何を好き好んで「不和」と「争い」を呼ばなければならないのだ?
しかし、当然これに女神エリスが怒ったのだ。彼女は披露宴に金のりんごを投げ込んだ。
その美しいりんごに目を奪われた3人の女神達がいた。
「まぁ、美しい!そのりんごはわらわの物ぞえ!」ゼウスの正妻にして嫉妬の女神ヘラ
「何を言っているの。私がもらうわ!」知恵の女神アテナ
「きゃ〜♪あたしもほし〜♪」美の女神アプロディテ
たちまちりんごをめぐって女神達が喧嘩を始めた。
これがエリスの狙いだったのだ。
さすが「不和」と「争い」を生み出すプロである。

ヘラ、アテナ、アプロディテはゼウスにこの美しい金りんごの所有権は最も美しい私にこそある!と主張した。
ゼウスは困った。とどのつまり、これは「3人の中で誰が一番美しい?」と迫られているのと変わらない。
ゼウスは悩んだ。3人が3人ともプライドの高い女神である。誰を選んでもトラブルは回避できそうに無い。
ゼウスはこの選択をスパルタ王の息子、パリスに任せることにした。
これは俗に言う「責任のがれ」と言うヤツである。
パリスにしてもいい迷惑である。
突然3人の女神が現れ、「最も美しい者にコレを渡せ」と、強引にりんごを持たされたのだから。
彼女らには、「公平な審査をしてもらおう」と言う考えはなかった。
3人はそれぞれパリスにみかえりを約束する。
「わらわを選べば、広大な領土を得る絶対なる権力をくれてやるわ」と、ヘラ。
「私を選んでくれたら、完全なる勝利を掴む力と知恵を授けてあげます」と、アテナ。
「あたしを選んでくれたらぁ、地上でいっちばん美人のぉ、ヘレナちゃんと結婚させてあげるぅ♪」と、アプロディテ。
(神々の資料館>「ゼウス〜」参照)
パリスは迷わずりんごを差し出した。
「あなたが一番ですっ」とアプロディテに金のりんごを渡したのだ。
この究極の選択が、後に始まるトロイア戦争の幕を切って落としたとも知らずに・・・・・

END