太陽神と同一視され、月の女神アルテミスの双子の兄、 音楽やスポーツや芸術を司るこの美男子神アポロンは弓の名手でもあった。 まぁ、それはちょっと置いといて、英語で「キューピッド」と呼ばれる愛を司る神エロス（美の女神アプロディテの息子）は 射った者の心に恋心を芽生えさせると言う恐ろしく、且つ、間抜けな（失言）弓矢を所有している。 しかし、この弓矢、馬鹿には出来ないのだ。 効果のほうは絶大。 どんなに嫌いだった筈の相手でもこの矢にかかれば心中したくなるほど愛してしまうという…。 しかも、この弓の威力は、他の神々の力を持ってしてもどうすることも出来ない。 まぁ、エロスの弓の腕のほうはどうだったかは定かではないが。 名手・アポロンはある日エロスの弓の腕前をヘタクソと嘲笑った。 それにムッときたエロスはある仕返しを企んだ。 悪質なことに、アポロンに例の「愛の矢」を放ち、水精の娘ダフネに恋させたのだ。 メラリと燃え滾る情熱と愛の炎を胸に、アポロンは彼女しか目に入らなくなる。 ダフネにしてみればさぞ、恐かったろう。 知らない青年が「愛してる」と絶叫しまくりながらこちらに向かって闘牛のように突進してくるのだから…。 ダフネは逃げた。なんだか知らんが逃げるしかない。 しかし、アポロンは腐ってもスポーツ万能の神。 ダフネがいくら走っても振り切れない。 橋まで追いつめられた彼女はなおも迫ってくるアポロンに呆れさえ感じた。 そして父である河の神、ペネイオスに訴える 「パパ、あの人しつこいの！なんとかして！」 するとダフネの体はみるみる月桂樹に変身して行く。 完全に樹と化してしまったダフネに、ブロークン・ハートのアポロンは悲しげに語りかける。 「せめて 俺の樹になっておくれ…」と。 樹は、風に揺れかすかに頷いたように見えたと言う… これを俗に、「勝手な解釈」とも言う。 アポロンがかぶっている月桂樹の葉の冠はこのダフネに葉でもある。 付け加えるが、アポロンとエロスの弓矢に関する喧嘩は他にもある。 しかも決まって無関係な第三者を巻き込む。 エロスが例の弓使ってアポロンに恋心を芽生えさせた相手・ヒュアキントス（♂）を、 アポロンが誤って円盤投げの狙いが狂い、脳天直撃で死なせてしまい アポロンはそれはそれは悲しんだ、なんてエピソードもあった(神々の資料館＞花特集「ヒヤシンス」参照) やはり気の毒なのはいつだって第三者である…。 　 ｔｈｅ End