ゼウス・連日浮気生活

 ある時ゼウスは浮気した。
地中海フェニキア国の王女、エウロペに浮気した。
侍女と共に海辺に遊びにきたエウロペに、純白の雄牛に変身して近づいた。
勝ち気な性格だったエウロペは面白がって雄牛に近づき、大人しくしている雄牛の角に花を飾ったり、撫でたりと楽しんでいた。
そして、背に乗ってみた・・・・と、その途端、雄牛は物凄い速さで駆け出し、
海に飛び込み、泳ぎ、クレタ島へ彼女を連れ去ってしまった。
島に着き、変身をといたゼウスは、妻になれば永遠にその名を残すことが出来る、と言って彼女を口説き落とした。
のち彼女はミノスを初めとする3人の子供を生み、クレタの王妃となる。
ゼウスの言った通り、エウロペの名は「ヨーロッパ」となって今日まで残っている。
ちなみに、白い雄牛は牡牛座の形になる。

 

ある時ゼウスは浮気した。
アルゴス王の娘、ダエナに浮気した。
「ダエナの産む子に殺される」と信託を受けていたアルゴス王は彼女を青銅の塔に彼女を閉じ込めていた。
当然、今度は牛では駄目だ。
ゼウスは黄金色の雨となって塔に忍び込み、眠っているダエナに降り注ぎ、
やがて彼女は一人の男の子(ペルセウス)を出産する。
びっくししたアルゴス王は彼女と子供を箱に詰め海に流してしまうが
ペルセウスは後に英雄となり、信託どおりアルゴス王を殺すことになる(「星たちの森」の「勇者の星〜」参照)

 

また、ある時ゼウスは浮気した。
レダと言う人妻に浮気した。
人妻だろーがなんだろーが、そんなこと関係ない。
「美女は全部俺のものだ」精神のゼウスは今度は美しい白鳥に姿を変えた。
突如現れた白鳥のあまりの美しさにレダは思わず白鳥を抱きしめた。
・・・これで「口説いた」ことになっているのだから神話の世界は楽なものである。
レダは森の奥で2つの卵を生み、うち一つからはカストルポリュクス兄弟、
もう一つからはヘレネクリュイテムネストラ姉妹の双子達が孵った。
カストル達男兄弟は後の双子座である。
ちなみに、ヘレネはこの後絶世の美女に育ち、トロイア戦争の原因になるのだ。

 

またまた、ある時ゼウスは浮気した。
これまたアルゴス王の娘、イオに浮気した。
絵画の世界ではレダとイオの間にもう一人、ガニュメデスと言う浮気相手(?)がいるのだが
ここではそっちはちょっと省く。(「星たちの森」の「水瓶座〜」を参照)
正妻ヘラに内緒でゼウスはイオと不倫(なにを今更・・・)していた・・・。
今回は雲に変身してイオとイチャついていたところ、ついにヘラに浮気がバレてしまった。
慌ててゼウスはイオを雌牛に変えてヘラを誤魔化そうとした。
しかし、ヘラはそんなことなどお見通し。
「その雌牛をわらわに下さいな」と冷淡にそう言い放つ正妻にゼウスは渋々雌牛のイオを渡した。
ヘラは百の目を持つ怪物に命じてイオを四六時中見張っていたが、
ゼウスはヘルメスに頼んでこっそりイオを逃がしたのだ。
ところがこれが火に油を注ぐようにヘラの怒りを煽り、今度はアブにイオを襲わせた。
アブは昼も夜もイオを追い掛け回し、イオは眠ることも出来ず逃げ続けた。
そこへまたゼウスの使いで現れたヘルメスがアブを全て叩き落とし、
イオをエジプトまで逃がし、彼女はそこでようやく人間に戻ることが出来た。

 

くどい様だが、またある時ゼウスは浮気した。
デバイ王の娘、セメレに浮気した。
しかも彼女は早々とゼウスの子を身篭った。動かぬ証拠を掴み、怒ったヘラはセメレに言った。
「お前のお腹の子は本当に大神ゼウスの子なのかえ?根拠はあんのかえ?」と。
セメレはヘラの言葉に不安になった。
なにせ、ゼウスはいつも違う姿で現れるのだから…。
どうしてもゼウス本来の姿を見てみたくなった。が、そこがヘラの狙いだった。
そしてある日セメレはゼウスに本当のの姿を見せてくれと頼んだ。
ゼウスは困ったが結局彼女の願いを聞き入れ、変身を解いた。
神の光をまとったゼウス本来の姿をセメレが見た・・・・と思った瞬間、
強すぎる神の光は、セメレを焼き殺してしまったのだ。
灰と化したセメレの体から胎児を拾い上げ、ゼウスは自分の腿に縫い込んだ。
この子供はやがて酒の神デュオニュソス(英語ではバッカスと)なり、後に死の国より
母を連れ戻し彼女を月の女神の一人にしてあげる、と、大層な親孝行である。

 

あの焼もち焼きのヘラを妻にしてから数百年(?)・・・
星の数ほど浮気して、星の数ほどの浮気相手がヘラの怒りを買って来た・・・
思えば、ヘラを口説き落とした時はカッコウに変身したっけなぁ
真冬にカッコウの姿で震えている所、当時まだ純粋(?)だったヘラは優しく胸に抱いて暖めてくれた
どこをどう間違ってあんなおっかないカミさんになっちまったんだろう・・・・
ゼウスはふと、ブルーな気持ちで思いにふけました

 

ある時ヘラはカナトスの泉に浸かりに行った。
毎年春になると浸かりに来るのだ。
すると、不実な夫の為に溜まりまくったストレスも年もきれいに洗い流され新婚当時の美しさが戻る。
この時のヘラには如何なる美もかなわない。
この時ばかりはゼウスも浮気をせずに新婚気分でヘラと過ごすと言う・・・

 

HAPPY END(!?)